バルトシュ・ガウル監督が率いるサンフレッチェ広島と、ガンバ大阪の対戦は、もちろん「J1WEST上位対決」ですが3バックと4バックという異なるシステム・哲学がぶつかる、戦術的な面白さの詰まったカードというのはもう皆さんもご存知でしょう。
この記事では、ガウル監督の戦術哲学を起点に、広島が対ガンバ大阪でどんな設計をしているのかをじっくり読み解いていきます。試合観戦がより深くなる一本として、ぜひ読み進めてみてください。
ガウル監督の戦術哲学――「目的のあるポゼッション」と可変する守備
バルトシュ・ガウル監督の戦術を一言で表すなら、「狙いを持って動く」サッカーです。
ガウル監督は「ポゼッションのためのポゼッション」を好みません。ボールを保持しながらも、常にゴールへの明確な意図を持った攻撃を構築することをチームに求めます。その根幹にあるのが、3-4-2-1というフォーメーションの柔軟性です。
守備時は5バックとなり、中盤とのブロックで堅固な2ラインを形成。一方、攻撃時はウイングバック(WB)が高い位置を取って実質的な3-2-5に変形し、幅と深さを使いながら相手守備を広げます。大迫敬介から始まる足元のビルドアップも特徴で、「守るだけのGK」ではなく、攻撃の第一の起点として機能します。
守備のトリガー(プレスのスイッチ)も明確に設定されています。
- 相手のバックパスが浅い → 中盤でのプレス発動
- 中盤でボール展開 → 距離を詰めてのコース限定
- サイドへの展開 → 連動したシフトでカット
単純なハイプレスではなく、状況判断に基づく「智のプレッシング」が広島の守備の強みです。
広島 3-4-2-1 の設計図――G大阪との噛み合わせを読む
ガンバ大阪の基本フォーメーションは4-2-3-1。ヴィッシング監督が植え付けた高強度プレッシングと保持を組み合わせた現代的なスタイルです。
この2つのフォーメーションがぶつかると、面白い構造的な非対称が生まれます。
ポイント① WBが作る「サイドの数的優位」
広島の3バックに対し、G大阪は4バックを使います。G大阪のサイドバック(SB)がWBを捕まえに出てくれば、その背後にスペースが生まれます。志知孝明や中野就斗(東俊希)といった広島のWBは、このスペースを突く能力を持っています。
SBが出てこなければ、WBがフリーで縦突破。出てくれば、背後をシャドーが狙う——この二択の迫り方が、広島の攻撃の基本原理のひとつです。
ポイント② 中盤の「ひし形」支配
G大阪の4-2-3-1では、2枚のボランチ(山本悠樹・安部柊斗)がダブルピボットを形成します。広島の川辺駿と松本泰志は、この2枚のピボットを「どう消しながらボールを動かすか」をテーマに戦います。
川辺がG大阪ボランチの脇のポジションを取り、相手を動かしながら松本泰志が間で受ける——こうしたコンビネーションが機能した時、広島の攻撃は加速します。
ポイント③ 3バックがストライカーを封じる
G大阪の1トップ・宇佐美貴史とウェルトンは、2シャドーとして広島の3バックを揺さぶります。広島の3CB(塩谷司・荒木隼人・佐々木翔)は個人能力が高く、1対1の対応では国内屈指の安定感を誇ります。
特に荒木隼人の読みの良さと佐々木翔の統率力は、G大阪前線との対戦でも発揮されてきました。ここで後手を踏まなければ、広島はペースを掴みやすくなります。
過去の対戦が語るもの――広島とG大阪の近年の戦績
直近の対戦データを見ると、一進一退の様相がよく見えてきます。
| 大会 | 日程 | スコア |
|---|---|---|
| J1第5節 | 2024年3月30日 | 広島 vs G大阪(接戦) |
| 天皇杯準々決勝 | 2024年9月11日 | 広島 1-2 G大阪 |
| J1第38節 | 2024年12月8日 | 広島 1-3 G大阪 |
| J1 | 2025年5月11日 | G大阪 0-1 広島(塩谷33分) |
2024年シーズン後半のJ1最終節では1-3と大差をつけられた広島ですが、2025年5月の対戦では塩谷司のゴールで1-0の完封勝利。セットプレーの強みとハードワークで接点を作り直した形でした。
天皇杯での敗戦(1-2)が示す教訓も重要です。G大阪はあの試合で、ロングボールからのセカンドボール争い→サイド展開という流れで広島の3バックを動かし、ライン間のスペースを巧みに使いました。ガウル広島が学んだのは、「中盤のフィルターを厚くする」「ライン間への縦パスコースを消す」という守備の課題を解消することでした。
ガウル広島がG大阪を崩す「3つのルート」
過去の対戦と戦術的な分析から、ガウル監督が対G大阪で仕掛けるルートを整理します。
ルート①「WBの裏抜けから早いクロス」
G大阪のSBが高い位置を取る場面では、WBが背後に走り込む縦突破から、ファーサイドへのクロスを選択。鈴木章斗のポストプレーで起点を作り、ジャーメイン良や中村草太がゴール前に飛び込む——これが最もシンプルかつ破壊力の高い攻撃パターンです。
ルート②「川辺駿が引き出して、シャドーが背後」
川辺駿がボランチとCBの間のスペースでボールを受けると、G大阪の守備はシフトを強いられます。その動きを見ながらシャドーが裏に抜け、縦パス1本で局面を打開する形。川辺のポジショニングセンスと縦への推進力が最大の武器になります。
ルート③「セットプレーから塩谷・荒木」
G大阪戦での過去の得点を振り返ると、セットプレーが重要な得点源になっています。2025年5月の勝利も塩谷のゴール。185cm以上のCBを揃える広島にとって、コーナーキックとFKは確実な得点機です。
ガンバの脅威に対する広島の守備設計
ガンバ大阪の最大の脅威は宇佐美貴史の個人能力と、ウェルトンのスピードです。
宇佐美は狭いスペースでも技術で前を向き、シュートを打つ能力を持ちます。広島の守備設計としては、「宇佐美にボールが入る前に潰す」ことが最優先。中盤でのボール回収率を高め、宇佐美が前を向く機会を減らすことが肝要です。
ウェルトンへの対応は「裏のスペース管理」がカギ。3バックの左(佐々木翔)がウェルトンの動き出しを予測しながら、WBの戻りとの連係で対応するのが理想的な形です。ここが崩れると失点リスクが一気に高まります。
また、ガンバが後半に打つ「5バックへの変形」も要注意。リードを守りに入ったガンバは堅固な守備ブロックを形成します。広島としては前半のうちに先手を取り、「追いかける展開」を避けることが重要です。
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まとめ
ガウル監督対ヴィッシング監督という2026年のJ1を席巻する戦術家同士のぶつかり合い。広島の3バックとガンバの4-2-3-1が生み出す非対称の攻防は、単純なスコアを超えた戦術的見どころの宝庫です。
WBの縦突破・川辺の中盤制圧・セットプレーの力——この3点が揃ったとき、広島はG大阪を崩す力を持っています。一方、宇佐美・ウェルトンへの対応を誤れば一発で裏をとられるリスクも存在します。
2025年の1-0勝利が示すように、広島はG大阪相手に「勝てる戦い方」を確立しつつあります。ガウル監督がその戦術的引き出しをどう使いこなすか——試合当日、ぜひそこに注目して観戦してみてください。
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記事内のデータは2026年3月時点の情報に基づきます。
