3連敗。それでも、バルトシュ・ガウル監督は方向性を変えない。
「やってきたことを信じて次の準備をする」
清水戦の敗戦後も、神戸戦の後も、ガウル監督が口にするのは同じ言葉です。これは強がりでも開き直りでもありません。ガウル監督の戦略の核心には、揺るぎない一本の哲学があるからです。
4月5日のホーム・アビスパ福岡戦。この試合は単なる「連敗脱出」以上の意味を持ちます。ガウル広島が目指すサッカーの「答え」を、ピッチで証明できるかどうかの試金石です。
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ガウル監督の戦略とは何か――「狙いを持ったビルドアップ」という哲学
まず、ガウル監督の戦略の本質を理解しておく必要があります。
ガウル監督が掲げるのは、「ただ持ち続けるだけのポゼッション」ではありません。ボールを保持する過程と最終局面での質を高める、目的志向型のビルドアップです。
監督は「指示ではなく、選手の意思決定を助ける情報を与えること」を自分の仕事と定義しています。感覚ではなく、構造と対話でサッカーを作る。これがガウル戦略の土台です。
具体的には、以下の3つの柱で構成されます。
1. 後方からの組み立て(ビルドアップ)
3バックとボランチが連動し、相手プレスをかいくぐりながら前進する。単純なロングボールに逃げず、パスコースを作り続けることで相手を動かす。
2. ハイプレスとトランジション
今季ここまでのデータでは、ハイプレッシング成功率49.2%(リーグ指数54)、奪取ポイント累計787(リーグ5位)を記録しています。ボールを奪ったあとの速い切り替えで決定機を作るのも、ガウル戦略の重要な柱です。
3. 選手の自立的判断
監督が細かく指示するのではなく、選手が状況を判断して動く。練習ではパスコースの作り方、ポジショニングの原則を反復し、試合で自動化できることを目指しています。
3連敗の本質――ガウル戦略は間違っていないが、実行が追いついていない
では、なぜ3連敗したのか。
ガウル監督は清水戦の敗因についてこう語っています。「フィジカルにたけた相手に対し、競り合いやセカンドボールを拾えなかった」。
これはガウル監督の戦略が失敗したというより、実行面での課題です。
- ビルドアップ時に相手の前線プレスをはがしきれず、ミスから失点
- セカンドボールを回収できず、守備が後手に回る
- セットプレーで競り負け、失点に直結
特に連敗が続いた名古屋・清水・神戸はいずれも、フィジカルと組織守備が整ったチーム。ガウル戦略が最も苦手とする「縦に速く、セカンドを拾う」スタイルにやられた形です。
しかし、それは裏を返せば「理想の相手」が来れば、ガウル戦略は存分に発揮できるということでもあります。
中島洋太朗という「解答」――ガウル監督が「非常に楽しみ」と語った理由
ここで登場するのが、中島洋太朗です。
股関節痛から復調しつつある19歳のボランチについて、ガウル監督は4月3日の練習後にこう言っています。
「すごくいい状態で、なじんできた。非常に楽しみ」
これは社交辞令ではありません。ガウル監督の言葉は常に具体的です。中島が「非常に楽しみ」な理由は、ガウル戦略の設計図に彼がぴったりはまるからです。
中島の特徴は、視野の広さと両足の精度。3日の練習でも、ボランチの位置から相手の激しいプレッシャーをかわし、次の攻撃につながるパスを出し続けていたと報じられています。
「とにかく試合に出たい。感覚も良く、準備はできている」
昨年2月の富士フイルム・スーパーカップで全国区になった後、左膝手術・股関節痛・体調不良と苦難が続いた。それでも「つなぐ部分で自分が力になれれば」と語る19歳の言葉は、ガウル戦略への深い理解を感じさせます。
後方からつなぐサッカーの「心臓部」に、ようやく理想の選手が入ってくる。
福岡戦でのガウル戦略――最下位相手だからこそ「答え」が出せる
アビスパ福岡は現在リーグ最多の16失点を喫しています。Football LABのデータでも、福岡はxGA(失点期待値)1.412と守備の脆弱さが数字に表れています。
福岡は「非保持を好み、シンプルに戦ってくる相手」(Football LAB分析)。つまり、深く引いてスペースを消す戦い方ではなく、広島がボールを持つ展開になりやすい。
これはガウル戦略にとって、絶好の「実験場」です。
ガウル監督が求める「狙いを持ったビルドアップ」を、存分に試せる相手。中島洋太朗が後方でボールを受け、荒木隼人・塩谷司・佐々木翔の3バックから前線へとつないでいく。川辺駿・松本泰志との中盤のユニットが機能すれば、広島のシュート数(今季リーグ1位・15.8本/試合)がさらに上積みされるはずです。
中島は福岡戦について、こう言っています。「チャンスは増えると思う。何とか(負けを)止めたい」
ガウル監督の戦略が試される90分
3連敗中の広島が、ガウル戦略の「理想形」を見せられるとすれば、この福岡戦がその場です。
ガウル監督は3/30のスピーチで「リスクをとって、自分たちのサッカーをやり続ける」と宣言しました。あの言葉は、サポーターへのパフォーマンスではなく、自分の戦略への確信から出た言葉です。
キム・ジュソンの離脱は痛い。しかし中島洋太朗という「ガウル戦略のために作られたような選手」が戻ってきた。
後方からつなぐ、狙いを持って前進する、相手を動かしてから仕留める。ガウル監督の戦略の全てが、エディオンピースウイングで見られる日が来たと思います。
紫のサポーターと一緒に、その瞬間を後押ししましょう。
まとめ
- ガウル監督の戦略:「狙いを持ったビルドアップ」+「ハイプレス」+「選手の自立判断」の三本柱
- 3連敗の原因:戦略の失敗ではなく、フィジカル対応とセカンドボール争いでの実行不足
- 中島洋太朗:視野と両足精度でガウル戦略のビルドアップを体現できる「心臓部」
- 福岡戦の構図:最多失点の相手に、ガウル戦略の「答え」を示す絶好の機会
- ガウル監督「すごくいい状態で、なじんできた。非常に楽しみ」(中島について)
