序章:サンフレッチェ広島、ブランド力で国内トップ3入りという快挙
今朝、chatGPTで定期的に取り寄せているニュースで、「クラブのブランド価値は全国3位に」というニュースが入ってきた。
果たしてこれはグッドニュースか?
改めてGeminiに問い直してまとめてもらいました。
それがここからのまとめです。
結構、興味深いです。
はじめに:歴史的評価の提示
英国に本拠を置く世界有数のブランド評価コンサルティング会社「Brand Finance」が2025年8月20日に発表した年次レポート「Football 50 2025」において、サンフレッチェ広島が日本のJリーグクラブの中で第3位という極めて高い評価を獲得しました 。具体的には、ブランドの強度を示す「ブランド力指数(BSI: Brand Strength Index)」で100点満点中58.9点を記録し、これは「A」ランクに相当するものです 。この結果は、浦和レッズと並ぶスコアであり、川崎フロンターレや横浜F・マリノスといった近年のJリーグを牽引してきた強豪クラブを上回る評価となります 。
この評価は、単なる一過性の人気やピッチ上での好成績だけを反映したものではありません。むしろ、クラブが長年にわたり、そして近年特に加速させてきた戦略的な取り組みが、測定可能で客観的な「ブランド力」として結実したことを示す、画期的な出来事であると言えます。
本レポートの構成と目的
本レポートでは、ユーザー様の関心事である「スタジアム人気」と「地域密着」という2つのキーワードが、なぜ、そしてどのようにして「ブランド力」という国際的な評価に繋がったのか、そのメカニズムを多角的に解明することを目的とします。そのために、以下の4つの視点から分析を深めていきます。
- 新スタジアム効果の解明: 2024年に開業した新本拠地「エディオンピースウイング広島」がもたらした革命的な影響を、定量的なデータと質的な変化の両面から分析します。
- 地域密着活動の価値評価: クラブが地道に続けてきた広範な地域貢献活動が、いかにして揺るぎないサポーター基盤とブランドへの信頼を築き上げたのかを検証します。
- 評価尺度の解読: 「ブランド力」という指標が具体的に何を意味するのか、Brand Finance社の評価手法を分かりやすく解説し、サンフレッチェ広島の成功が論理的な必然であったことを示します。
- 内外比較による現在地の確認: 国内の競合クラブや世界のトップクラブとの比較を通じて、サンフレッチェ広島の戦略の独自性を浮き彫りにし、今後の展望を探ります。
この分析を通じて、サンフレッチェ広島の躍進の裏にある、緻密に計算されたブランド戦略の本質に迫ります。
第1部:躍進の原動力①:新スタジアム「エディオンピースウイング広島」がもたらした革命
サンフレッチェ広島のブランド力を飛躍的に向上させた最大の要因は、新スタジアム「エディオンピースウイング広島」の誕生にあります。このスタジアムは単なる「観戦施設」ではなく、ブランド価値を創出する強力な「体験創出装置」として機能しています。
1-1. 観客動員数の飛躍的増加と熱狂の可視化
新スタジアムの効果は、まず何よりも具体的な数字に表れています。2024シーズン、サンフレッチェ広島のホームゲーム平均観客動員数は、クラブ史上最多となる25,609人を記録しました 。これは、旧本拠地であったエディオンスタジアム広島での2023シーズンと比較して、実に
約59%増という驚異的な伸び率です 。
表1:新旧本拠地における観客動員数比較
| 年度 | 本拠地スタジアム | 平均観客動員数 | 前年比増加率 | J1リーグ収容率 |
| 2023 | エディオンスタジアム広島 | 約16,100人 (推定) | – | – |
| 2024 | エディオンピースウイング広島 | 25,609人 | +59% | 90.3% |
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出典: のデータに基づき作成
さらに特筆すべきは、約28,500人を収容するスタジアムの収容率が、J1リーグでナンバーワンとなる**90.3%**に達したことです 。これは、単に動員数が多いだけでなく、スタジアムが毎試合のように満員の熱気に包まれていることを示しています。この「常に満員である」という光景そのものが、クラブの勢いを可視化し、メディアやスポンサー、そして潜在的なファンに対して強力なブランドイメージを発信する上で、計り知れない価値を持っています。
1-2. 「最高の観戦体験」がもたらす無形の資産
Brand Finance社は、サンフレッチェ広島のブランド力向上を分析する中で、「質の高い施設と改善された試合日の体験(high-quality facilities and an improved matchday experience)」が大きく貢献したと明確に指摘しています 。これは、ファンがスタジアムで得られる満足感、興奮、快適さといった無形の「体験価値」が、ブランドへの好意や忠誠心(ロイヤルティ)を育み、最終的にブランド力という評価に直結することを示唆しています。
クラブは、この熱狂をスタジアム内だけに留めませんでした。特に効果的だったのが、SNS、とりわけYouTubeショートやInstagramリールといった「ショート動画」の積極的な活用です 。これらのプラットフォームは、既存のフォロワー以外にも情報が拡散されやすい特性を持っています。クラブは、スタジアムの臨場感あふれる映像やサポーターの熱狂を短い動画に凝縮して発信することで、これまでサッカーに興味が薄かった新規層にもスタジアムの魅力を届け、足を運ぶきっかけを作ることに成功しました。これは、リアルな場での優れた体験と、それを拡散させるデジタル戦略が見事に噛み合った、現代的なブランドコミュニケーションの好例と言えるでしょう。
1-3. スタジアムを核とした新たなまちづくり「STAHUG」
エディオンピースウイング広島の真価は、年間約20試合の開催日に留まりません。クラブと地域が一体となって推進する「STAHUG(スタハグ)」プロジェクトは、このスタジアムを試合のない日も人々が集う「開かれたコミュニティハブ」へと変貌させています 。
スタジアムでは、マルシェやワークショップ、地域のキーパーソンを招いたトークイベントなどが不定期に開催され、サッカーファンならずとも誰もが気軽に立ち寄れる賑わいの空間が創出されています 。この取り組みは、スタジアムの概念を根底から覆すものです。
従来のスタジアムは、試合日以外は活用されることの少ない、巨大な「コストセンター(費用を生む部門)」でした。しかし、サンフレッチェ広島は、STAHUGを通じてスタジアムを365日価値を生み出す「プロフィットセンター(収益を生む部門)」であり、かつブランドの発信拠点である「ブランドハブ」へと転換させることに成功しています。
この戦略は、世界で最もブランド価値の高いスポーツチームの一つであるNFLのダラス・カウボーイズが、本拠地「The Star」をチーム施設だけでなく、企業のグローバル本社や商業施設、医療機関などを誘致した複合施設として開発し、地域社会とのエンゲージメントを深めることでブランド力を強化している事例とも軌を一にしています 。スタジアムを核として地域との接点を日常的に創出することで、サッカーに興味のない層にもクラブの存在を浸透させ、地域全体のブランド資産を高めていく。この先進的なアプローチが、Brand Finance社の評価においても高く評価されたことは想像に難くありません。
第2部:躍進の原動力②:地域に深く根差す活動と揺るぎないサポーター基盤
サンフレッチェ広島のブランド力を支えるもう一つの、そしてより根源的な柱が、長年にわたって続けられてきた「地域密着」の活動です。新スタジアムがブランド力の飛躍的な「ジャンプ」をもたらしたとすれば、地域密着活動は、そのジャンプを支えるための揺るぎない「土台」を築き上げてきました。
2-1. 活動の体系化:ピッチ外での広範な貢献
サンフレッチェ広島の地域貢献活動は、単発的なイベントの集合体ではありません。クラブは公式にホームタウン活動を以下の4つの分野に体系化し、戦略的かつ継続的に取り組んでいます 。
- ECO(環境): スタジアムでのゴミ分別回収や清掃活動、フードドライブ、小型家電回収など、環境保全への貢献。
- KIDS(子ども): サッカー教室や小学校訪問、小学一年生への無料パスポート配布など、次世代育成への貢献。
- LIFE(福祉): 障害者支援、生涯スポーツの振興、介護予防支援活動など、すべての人が健やかに暮らせる社会への貢献。
- LOCAL PROMOTION(地域振興): 地域イベントへの参加、災害時の支援募金活動、国際交流など、地域社会の活性化への貢献。
表2:サンフレッチェ広島の主な地域貢献活動一覧
| 分野 | 具体的な活動内容 |
| ECO(環境) | 街の清掃活動、フードドライブ、小型家電回収、スタジアムでのゴミ分別、温暖化対策、選手バスへの次世代バイオディーゼル燃料利用 |
| KIDS(子ども) | 小学校ふれあいサッカー大会、サッカー教室、サンチェたいそう幼稚園訪問、小学一年生パスポート、職業体験 |
| LIFE(福祉) | 障害者支援、生涯スポーツ振興、介護予防支援活動、ピンクリボン活動支援 |
| LOCAL PROMOTION(地域振興) | 地域イベントへの参加、地域産業振興、災害支援募金活動(西日本豪雨災害、広島土砂災害など)、国際交流(パラグアイへのユニフォーム寄贈など)、防災活動 |
出典: のデータに基づき作成
これらの多岐にわたる活動は、クラブが単なるプロスポーツチームではなく、地域社会に不可欠なインフラの一部として機能していることを明確に示しています。
2-2. 「信頼」というブランド資産の構築
特に重要なのは、2014年の広島土砂災害や2018年の西日本豪雨災害など、地域が未曽有の困難に直面した際に、クラブが選手やスタッフ、サポーターと一体となって支援活動に尽力してきた歴史です 。こうした有事の際の姿勢は、地域住民の心に深く刻まれ、クラブに対する単なる「好き」という感情を超えた、「信頼」という強固な絆を育んできました。
この「信頼」こそが、ブランドの根幹をなす無形の資産です。スポーツチームのブランド価値は、しばしば試合の勝敗という不安定な要素に左右されがちです。しかし、サンフレッチェ広島は地域貢献活動を通じて、ピッチ上の成績とは独立した強固な信頼基盤を築き上げています。この信頼は、たとえチームが不調な時期にあってもサポーターが離れず、スポンサーが支援を継続する、ブランドの「レジリエンス(強靭性、回復力)」の源泉となります。Brand Finance社が評価する「ブランドの強さ(Strength)」とは、まさにこの種の安定性や持続可能性を指しており、地域密着活動がこの評価軸において極めて重要な役割を果たしていることは明らかです 。
さらに、選手が移動に使うバスに次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を国内のサッカークラブで初めて導入するなど 、環境問題のような現代的な社会課題への先進的な取り組みも、クラブの評判を高め、ポジティブなブランドイメージの構築に寄与しています。これらの地道な活動の積み重ねが、クラブのブランドを単なる「エンターテインメント」から、地域社会と未来を共にする「共同体」の象徴へと昇華させているのです。
第3部:「ブランド力」とは何か?Brand Finance社の評価尺度の解読
サンフレッチェ広島の躍進を正しく理解するためには、そもそもBrand Finance社が用いる「ブランド力」という評価尺度が何を意味するのかを知る必要があります。専門的で難解に思われがちなこの評価手法を解き明かすことで、広島の成功が評価指標の観点から見ても論理的な必然であったことが見えてきます。
3-1. ブランド力を測るモノサシ「BSI(ブランド力指数)」
Brand Finance社がブランドの強さを評価するために用いる中核的な指標が、「ブランド力指数(BSI: Brand Strength Index)」です 。これは、0から100までのスコアで算出され、このスコアに基づいて、企業の信用格付けと同様に「AAA+」から「D」までのブランド格付けが付与されます 。サンフレッチェ広島が獲得したスコア「58.9」と格付け「A」は、「強い(Strong)」ブランドであることを示しています 。
BSIは、ブランドの現在のパフォーマンスだけでなく、内在するリスクや将来のポテンシャルを競合と比較して評価する、総合的な指標です。
3-2. BSIを構成する「三本の柱」
BSIは、感覚的な評価ではなく、国際標準(ISO 20671)に準拠した客観的なフレームワークに基づいて算出されます 。その評価は、主に以下の「三本の柱」から構成される「バランススコアカード」によって行われます 。
- マーケティング投資(Inputs): ブランドを構築・維持するために、企業がどれだけの投資を行っているかを評価します。
- サンフレッチェ広島の事例: 新スタジアム「エディオンピースウイング広島」の建設は、この上なく巨大で戦略的な「投資」です。また、SNSや公式アプリの活用によるデジタルマーケティング 、そして第2部で詳述した広範なホームタウン活動 も、ブランドへの重要な「インプット」と見なされます。
- ステークホルダーエクイティ(Equity): 上記の投資の結果として、ステークホルダー(ファン、地域住民、スポンサー、メディアなど)の心の中に、どのような評判、愛着、満足度が醸成されているかを評価します。
- サンフレッチェ広島の事例: 「最高の観戦体験」によるファンの満足度向上、地域貢献活動によって築かれた地域住民からの「信頼」、そして常に満員のスタジアムが醸し出す熱狂 は、すべて質の高い「ステークホルダーエクイティ」です。ランキング1位の鹿島アントラーズが「熱狂的なファン」という項目で高く評価されていることからも、このエクイティの重要性がうかがえます 。
- 事業パフォーマンス(Outputs): ブランド力の「結果」として、どのような具体的な業績に結びついているかを評価します。
- サンフレッチェ広島の事例: クラブ史上最多を更新した記録的な観客動員数 、リーグトップの収容率 、そしてそれに伴うチケット収入やグッズ販売、スポンサー収入の増加(推定)は、ブランド力がもたらした明確な「アウトプット」です。
この「投資 → 評判 → 業績」という流れは、Brand Finance社が提唱する「ブランド価値連鎖(Brand Value Chain)」そのものです 。多くの組織が目先の「業績(Outputs)」のみを追求しがちですが、サンフレッチェ広島の成功は、その源泉となる「投資(Inputs)」と「評判(Equity)」を着実に積み上げてきた結果であることが、このフレームワークを通じて明確に理解できます。つまり、広島の躍進は偶然ではなく、ブランド構築の王道を実践した論理的な帰結なのです。
3-3. Jリーグ内でのポジショニング
サンフレッチェ広島の3位という順位を、国内の競合クラブとの比較において客観的に見てみましょう。
表3:Jリーグクラブ ブランド力ランキング TOP10 (2025)
| 順位 | クラブ名 | BSIスコア | ブランド力評価 |
| 1 | 鹿島アントラーズ | 63.5 | A+ |
| 2 | ガンバ大阪 | 60.6 | A+ |
| 3 | サンフレッチェ広島 | 58.9 | A |
| 4 | 浦和レッズ | 58.9 | A |
| 5 | 清水エスパルス | 57.9 | A |
| 6 | 川崎フロンターレ | 57.2 | A |
| 7 | 名古屋グランパス | 56.4 | A |
| 8 | ヴィッセル神戸 | 55.9 | A |
| 9 | セレッソ大阪 | 54.9 | A- |
| 10 | 横浜F・マリノス | 54.1 | A- |
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出典:
このランキングは、サンフレッチェ広島がJリーグを代表するブランドの一つとして確固たる地位を築いたことを示しています。次章では、上位クラブとの戦略の違いや、世界との比較を通じて、広島の現在地と未来への展望をさらに深く考察します。
第4部:国内競合と世界の強豪との比較:サンフレッチェ広島の現在地と未来への展望
サンフレッチェ広島のブランド戦略の独自性は、国内のトップクラブや世界の強豪と比較することで、より一層鮮明になります。この比較分析は、広島の現在地を客観的に評価し、今後の課題を浮き彫りにします。
4-1. 国内トップ2との戦略比較
今回のランキングでサンフレッチェ広島を上回った上位2クラブは、それぞれ異なるアプローチでブランド力を高めています。
- 1位 鹿島アントラーズ(BSI 63.5): 鹿島の強みは、巧みな「ターゲットセグメンテーション」にあります。サポーターの約4割が女性であるというデータに基づき、「Dear Ladies」というコンセプトの下、ファッション誌『ViVi』とのコラボグッズ展開やTikTokコンテンツの配信など、若年女性層に特化したマーケティングを積極的に行っています 。特定のファン層のエンゲージメントを深く掘り下げることで、強力なブランドを構築しています。
- 2位 ガンバ大阪(BSI 60.6): ガンバ大阪の戦略は、「テクノロジーの活用」が特徴です。長年のパートナーであるパナソニックの技術協力により、Jリーグの統合ID基盤から得られるデータを活用した「データドリブン・マーケティング」を実践しています 。ファンを詳細にセグメント分けし、個々の興味に合わせたパーソナライズされた情報を提供することで、ファンとの関係性を強化しています。
これに対し、サンフレッチェ広島の独自性は、「スタジアムという物理的なハブ」と「地域コミュニティとの共生」を両輪とする、より普遍的で地域全体を巻き込むモデルである点にあります。特定のセグメントや最先端のデータ分析に特化するのではなく、誰もがアクセス可能な物理的な「場」の価値を最大化し、地域社会との情緒的な繋がりを深めるという、いわば王道のアプローチで成功を収めました。この戦略は、特定の技術やトレンドに左右されにくく、持続可能性が高いという強みを持っています。
4-2. 世界基準から見たJリーグのブランド力
視野を世界に転じると、欧州のトップクラブとの間には、依然として大きな隔たりが存在します。Brand Finance社のグローバルレポートによれば、世界で最も価値のあるブランドであるレアル・マドリードのブランド価値は19億ユーロ(約3,000億円以上)に達し、ブランド力評価も最高の「AAA+」です 。これは、巨額の放映権料、グローバルなスポンサーシップ、そして世界中に広がる数億人規模のファンベースに支えられています 。
ここで重要になるのが、「ブランド価値(Brand Value)」と「ブランド力(Brand Strength)」の違いを理解することです。
- ブランド価値(Brand Value): ブランドが将来生み出すと予測される収益を現在価値に換算した、金額で示される指標です。事業規模や市場の大きさに大きく依存します 。
- ブランド力(Brand Strength): マーケティング投資や評判、業績などに基づき、ブランドの無形の強さをスコア(BSI)と格付けで示す指標です。事業規模の大小に必ずしも比例しません 。
Jリーグクラブが、収益規模に直結する「ブランド価値」で欧州のメガクラブとすぐに肩を並べるのは現実的ではありません。しかし、ブランドの「質」を示す「ブランド力」においては、世界レベルで伍していくことが可能です。事実、サンフレッチェ広島の「A」という評価は、例えば中国スーパーリーグで最強のブランドと評価された山東泰山の「A」評価(BSI 57.6)を上回るものであり、アジアの中でもトップクラスのブランドマネジメントが行われていることを示唆しています 。
このことから導き出されるのは、Jリーグクラブが目指すべき現実的な戦略です。それは、まず自らの足元である地域における「ブランド力」を極限まで高めること。そして、その強固なブランド力を基盤として、持続的に収益性を向上させ、結果として「ブランド価値」を高めていくという、着実な成長モデルです。サンフレッチェ広島の現在の成功は、まさにこの戦略の正しさを証明していると言えるでしょう。
終章:持続的成長への提言:ブランド価値を更なる高みへ
分析の総括
本レポートの分析を通じて、サンフレッチェ広島がBrand Finance社の評価で国内3位という快挙を成し遂げた背景には、明確な戦略と長年の努力があったことが明らかになりました。その成功の核心は、新スタジアム「エディオンピースウイング広島」という戦略的な「ハード」投資と、長年にわたる地道な地域密着という「ソフト」活動が、見事に融合した点にあります。
新スタジアムは熱狂的な観戦体験と圧倒的な集客力を生み出し、それがブランドの「事業パフォーマンス」を劇的に向上させました。一方で、地域社会に深く根差した活動は、勝敗を超えた「信頼」という強固な「ステークホルダーエクイティ」を築き上げ、ブランドの安定性と持続可能性を担保しています。この両輪が噛み合ったことで、「投資が評判を生み、評判が業績に繋がる」という理想的なブランド価値の好循環が生まれているのです。
このサンフレッチェ広島の成功モデルは、ピッチ上の成績だけに依存しない、持続可能なクラブ経営を目指す他の多くの地方クラブにとって、非常に価値のある手本となるでしょう。
未来への提言
サンフレッチェ広島がこの勢いを維持し、ブランド価値を更なる高みへと引き上げていくために、以下の3つの戦略的方向性を提言します。
- スタジアム体験の深化とデジタル化の推進: 世界トップクラスの観戦環境をさらに進化させるため、AR(拡張現実)技術を活用した新たな観戦体験の提供や、スタジアム内の完全キャッシュレス化による利便性の向上など、デジタル技術の活用をさらに進めるべきです。また、非試合日の「STAHUG」プロジェクトをさらに多様化させ、音楽ライブや文化イベント、ビジネスセミナーなどを積極的に誘致し、スタジアムを広島の文化・経済活動の中心地として確立することが期待されます。
- 地域密着のグローバル化:「PEACE」ブランドの確立: 広島という都市が持つ「平和(PEACE)」という世界的に認知された強力なメッセージと、クラブブランドをより意図的に結びつけるべきです。国際的な平和イベントへの参加や、海外クラブとのチャリティーマッチの開催、JICAと連携した国際貢献活動の拡大 などを通じて、「平和を象徴するクラブ」としての独自のブランドポジションを世界に向けて発信していくことが、グローバルなファン獲得とブランド価値向上に繋がります。
- 「ブランド力」から「ブランド価値」への戦略的転換: 今回証明された高い「ブランド力(BSIスコア)」を、より具体的な収益、すなわち「ブランド価値(金額)」へと転換していくためのマーケティング戦略を強化する必要があります。例えば、BSIスコアの高さを客観的なデータとして提示し、スポンサーシップ契約の価値向上に繋げる交渉を行うことや、新たなファン層に響くマーチャンダイジング(商品化計画)を展開することなどが考えられます。ブランド力の向上を、クラブの財務基盤強化へと直結させるサイクルを確立することが、持続的成長の鍵となります。
サンフレッチェ広島は、新スタジアムという翼を得て、新たな高みへと飛び立ちました。今後、地域との絆をさらに深め、世界へと視野を広げることで、そのブランドは日本を代表する存在として、さらなる輝きを放つことになるでしょう。
