の高校の同級生に、熱心なサンフレッチェ広島サポーターの女性がいる。彼女いわく、「サンフレッチェの選手たちはイケメン指数が高い」とのことだが、その中でも突出してイケメン指数が高いのは、志知孝明選手だろう。その風貌はまるで侍。クールで、凛としていて、本当にかっこいい。
だが、そのかっこいい男が、なかなかピッチで輝けない時間が続いていた。
(この記事は、中野和也さんのシグマクラブを参考にさせていただいています。中野さんのシグマクラブは、サンフレッチェ広島サポ必読のwebマガジンですよ)
覚醒への準備
理由は彼の実力が伴わないということでは、断じてない(それは僕が言うまでもないですよね)。問題は、サンフレッチェ広島という独特なシステムの中での、彼の能力の生かし方にあった。
本来、志知孝明は4バックのサイドバックを専門とする選手とのこと。しかし広島は基本的に3バックシステム。
中野和也さんのシグマクラブのレポートにもあった通り、今季のキャンプから彼のポジションは3バックの左ストッパーが中心だった。石垣島キャンプでは4バックのCBとしても試され、「いやあ、それは聞いていなかった。初めての経験です」と苦笑いする場面もあったという。
攻撃にストロングを持ち、リーグトップクラスと評されるほど精度の高い左クロスを武器とする選手が、最終ラインに縛られている。そのもどかしさは、本人が一番感じていたはずだ。
そしてついに、志知選手はガウル監督に直談判した。「ウイングバックでやらせてほしい」と。若き指揮官はコミュニケーションを大切にする人物で、その対話の結果が、ACLエリートFCソウル戦での左ウイングバック起用という形で表れたんだと思う。
ぶっつけ本番のウイングバック
しかし、である。志知選手自身が明かしたことに驚かされる。
「ウイングバックは今日がぶっつけ本番だったんですよ。トレーニングでも、全くやっていなかった」
それでも、彼はピッチに立った。68分、背番号16が左ウイングバックとして送り込まれた時、チームは0対2のビハインド。状況はかなり厳しかった。
広島はサッカーの内容こそ相手を圧倒していた。しかし、セットプレーのミスからのカウンターで献上したPK、そしてオウンゴールという「不運」と「ミス」が重なって、なかなかスコアをひっくり返せずにいた。元京都のGKク・ソンユンのスーパーセーブにも悩まされ、時計の針だけが無情に進んでいく。
そして、アディショナルタイム
まず90+2分、小原基樹の仕掛けから生まれたスルーパスに中村草太が反応。裏を取ったところからのクロスに、ジャーメイン良選手が滑り込んでゴールをこじ開けた。2対1。1点差。しかし残り時間はわずか数分しかない。
それでも、志知選手は諦めていなかった。
新井のコーナーキックからの流れ、クリアを繰り返す攻防が続く中、広島が再び放り込む。ペナルティエリア付近、木下康介、ジャーメイン、山﨑大地の3人がボールを目で追う中、志知孝明だけが違う動きをしていた。ボールではなく、スペースを見て、走り出していた。
ボールは木下の頭上を越えた。志知が追う。チラリと中を見る。しかし、DFが迫ってくる。止める余裕はない。
感覚だけで、体をひねりながら、左足を振った、とのこと。ノートラップ、ノールック。中を確認せずにクロスを上げた。
「康介がいいところに入ってきてくれる。任せよう」
その感覚通り、木下康介選手がドンピシャのタイミングで飛び込んでくる空間に、ボールはピタリと落ちた。
美しい同点ゴール。ソウルの寒空に、広島の雄叫びが響いた。
あの難しいクロスを「感覚で入れた」と志知選手は言う。体を左向き気味にしながら思い切って腰をひねり、素早く左足を振り抜く。技術と感覚が融合した一瞬だった。
バルトシュ・ガウル監督の戦術もさらにレベルアップしていくだろう
逆転には至らなかった。もっと早くあの攻撃を見たかったというのも、正直なところだ。でもこの試合で、サンフレッチェ広島の可能性がさらに広がったことは間違いない。なぜなら、志知孝明選手のようなクオリティを持つ選手が、終盤の交代枠で出てくるクラブなのだから。これでACLエリートのノックアウトステージは、ジョホールとの対戦が決まった。嫌な相手ではあるが、今のサンフレッチェなら十分に勝機はある。というか勝ち上がるだろう。ただ、守備面の整備はもう少し必要かな、という気はしている。これはバルトシュ・ガウル監督も、選手たちもよくわかっているだろう。
そして何より、侍のような佇まいを持つ男が、ようやく輝き始めた。それはチームにとって、これ以上ない大きなプラス材料だ。
サンフレッチェ広島の侍=志知孝明の覚醒によってバルトシュ・ガウル監督の戦術も変わってくるに違いない。
何をやってもクールな男。志知孝明。でもその冷静な風貌に隠されたハートは、誰よりも熱く燃えている。
と言うことで、これからの志知孝明選手とサンフレッチェ広島が楽しみですね。
