J1百年構想リーグ WEST第10節|2026年4月11日(土)
エディオンピースウイング広島
まず最初にお断りをしておく。
これから僕が書くことは、審判個人を攻撃するものではない。誹謗中傷をするつもりも一切ない。Jリーグの判定がどうあるべきか、VARはどう機能すべきか、そしてJFAはどう変わるべきか。それを問うものだ。
これは神戸戦のPK誤審の記事でも書いたことだし、そのあとの記事でも書いた。今回もまったく同じスタンスだ。
(⬇️問題のシーンももちろん含まれているダイジェスト動画)
また起きた。今度は「ノーゴール」判定
4月11日、エディオンピースウイング広島で行われた清水エスパルス戦。
前半5分、広島の右サイドからロングスローが入る。DF荒木隼人が強烈なヘッド。清水GK梅田透吾が横っ飛びでワンハンドセーブ。しかしボールはポストに当たってゴール前に転がった。そこに走り込んだジャーメイン良が左足を伸ばしてボールを押し込んだ。
梅田が左足で必死にかき出す。
ゴールか、ノーゴールか。
スタジアムがざわめく中、VARチェックが行われた。
結果は「ノーゴール」。
スタジアムに「得点なし」と表示された。
SNSは大論争、映像は拡散された
試合後、SNSには映像や画面キャプチャが拡散された。
「また誤審ですか…」「めちゃくちゃ入ってるように見えるんですが」「横からの映像を見ると完全に入っている」――ゴールだったという声が噴出した。
一方で、冷静な意見もあった。「ラインを超えているように見えるのはスパイクでは?」「視差がある上で誤審と言い切れる材料はない」「VARの映像ではGKの体に隠れて決定的な証拠が確認できなかった」。
広島がJリーグに意見申し立てへ
中国新聞の報道によると、サンフレッチェ広島はこの判定について近くJリーグに意見を申し立てるという。
クラブは「人の目や、VARの映像で判別ができなかったのであれば、カメラの精度や台数を増やすことが必要ではないか」とコメントしている。
このクラブの姿勢は、僕は正しいと思う。感情的に「ゴールだった」と叫ぶのではなく、「判別できないこと自体が問題だ。仕組みを改善しよう」という建設的な意見だからだ。
問題の本質は「入っていたかどうか」ではない
ここからが本題だ。
多くの人は「あれはゴールだったのか、ノーゴールだったのか」を議論している。もちろんそれは大事なことだ。
しかし、僕が本当に問題だと思っているのは別のことだ。
「なぜノーゴールと判断したのか」、その判定プロセスがまったく見えないことだ。
VARの担当者は、どの映像を確認したのか。何台のカメラの映像をチェックしたのか。どの角度から見て、何を根拠に「ラインを越えていない」と結論づけたのか。それとも「越えたか越えていないか判別できないからノーゴール」としたのか。
何もわからない。
スタジアムに表示されたのは「得点なし」の4文字だけ。選手も、監督も、サポーターも、「なぜ」がわからないまま試合が進行した。
そしてもう一つ。VARが判断に使用した映像・動画は、すべて公開されるべきだ。
どのカメラの、どの角度の映像を見て判断したのか。その映像そのものを公開すれば、議論の土台ができる。「この映像では確かに判別不能だな」と納得できるかもしれないし、「この映像で判別できないなら、カメラの配置を変えるべきだ」という建設的な提言につながるかもしれない。
現状はどうか。公式な映像が公開されないから、SNSで未確認の画像や動画が飛び交い、憶測が憶測を呼んでいる。 「入ってる」「入ってない」の水掛け論が延々と続き、審判への個人攻撃や陰謀論まで飛び出す始末だ。
これは誰にとっても不幸な状況だ。審判にとっても、クラブにとっても、サポーターにとっても。
公式に映像と判定根拠を公開すれば、少なくとも事実に基づいた議論ができる。未確認情報が拡散する余地もなくなる。情報の透明性が、無用な混乱を防ぐ最善の方法だ。
神戸戦PK誤審から何も変わっていない
僕は3月27日の神戸戦PK誤審のあと、2本の記事を書いた。
あのとき書いたことの核心は一つだ。
「なぜそう判断したのか」のプロセスを公表しない限り、同じミスは繰り返される。
神戸戦では、JFA審判委員会が12日後にようやく「あれは誤審でした」と認めた。佐藤隆治JFA審判マネジャーが「これは反則ではない」と明言し、主審もVARもミスだったという見解を示した。
認めたこと自体は良かった。しかし、あのPK判定が下されるまでの思考プロセスは結局明らかにされていない。
そして今回、また同じことが起きた。
今度の問題はさらに厄介だ。神戸戦のPKは映像を見れば「どう見てもPKじゃない」とわかった。しかし今回のノーゴール判定は、映像を見ても判別が難しい。だからこそ、なぜノーゴールと判断したのか、その根拠を示すことがより重要になる。
判定プロセスの公開は、もう「あったらいいな」ではない。必須だ
「ノーゴールでした」——それだけでは何も改善されない。
今回の清水戦で言えば、少なくとも以下のことは公表されるべきだと思う。
- VARは何台のカメラ映像を確認したのか
- どの角度の映像を根拠にノーゴールと判断したのか
- 判別不能だった場合、「判別不能=ノーゴール」という運用ルールは適切なのか
- オンフィールド・レビューを行わなかった理由は何か
これらを公表することで、初めて建設的な議論ができる。カメラの台数が足りないならば増やすべきだし、角度が悪いならば配置を変えるべきだ。ルールの運用に問題があるならば改訂すべきだ。
原因がわからなければ、改善のしようがない。
ゴールラインテクノロジーの導入を本気で考える時が来た
広島のクラブが指摘した「カメラの精度や台数を増やすことが必要ではないか」という意見は的確だが、もう一歩踏み込むべきだと思う。
ゴールラインテクノロジー(GLT)の導入だ。
ヨーロッパの主要リーグでは、ボールがゴールラインを越えたかどうかを機械的に判定するGLTが導入されている。プレミアリーグ、ブンデスリーガ、セリエA、リーグ・アン。FIFAワールドカップでも2014年から採用されている。人の目やVAR映像では判別不能な場面でも、GLTならば瞬時に正確な判定が下せる。
Jリーグでは導入されていない。理由はコストだ。全スタジアムへの導入には10億円規模の費用がかかると言われている。
確かに安くはない。しかし、こういう議論を呼ぶ判定が続けば、リーグの信頼性そのものが揺らぐ。選手は全力でプレーしている。その全力のプレーが、技術的な限界で正当に評価されないのであれば、それは選手に対して失礼だ。
今回の清水戦のように、人の目でもVARの映像でも判別できない場面があることが証明された。ならば、機械の力を借りるしかない。コストの問題は、段階的な導入やスポンサーとの協力など、知恵を絞る余地があるはずだ。
広島サポーターとして、前を向いて言いたいこと
誤解のないように言っておく。僕はこの記事を「被害者意識」で書いているわけではない。
試合は広島がPK戦で勝った。結果はついてきた。仮にあのシュートがゴールと認められていれば、もっと楽な展開だったかもしれないが、それは「たられば」だ。
それよりも、僕が言いたいのはJリーグ全体の話だ。
今日の被害者が広島でも、明日は別のクラブかもしれない。実際、他の試合でもVARの判定をめぐる議論は続出している。これはサンフレッチェ広島だけの問題ではない。Jリーグ全体の問題だ。
だからこそ、以下の3つを強く求めたい。
1. 判定プロセスの即時公開
VARで判定が確定した時点で、その根拠をスタジアムで説明するべきだ。「ノーゴール」の4文字だけではなく、「○○の映像を確認した結果、ボールがゴールラインを完全に越えたとは確認できなかった」と。ヨーロッパではそういう方向に進んでいる。
2. JFA審判委員会による事後レビューの公表
今回の判定についても、神戸戦のように事後的にレビューを行い、その結果を公表すべきだ。正しかったのか、間違っていたのか。そしてなぜその判断に至ったのか。
3. ゴールラインテクノロジーの導入ロードマップ策定
コスト面の課題は承知している。しかし「高いから無理」で終わらせてはいけない。段階的導入でも、限定的導入でもいい。ロードマップを示してほしい。
「なぜ」を問い続けることが、Jリーグを強くする
神戸戦PK誤審のあとに僕が書いた記事で、こう締めくくった。
サポーターも、審判も、クラブも、JFAも。みんなで一緒に成長していく。それがJリーグのいいところだと、僕は思っている。
今もその気持ちは変わらない。
審判を叩きたいわけじゃない。犯人探しをしたいわけでもない。
ただ、「なぜ」を問い続けることが必要だと思っている。
なぜノーゴールと判断したのか。なぜVARで覆せなかったのか。なぜGLTがないのか。
その「なぜ」に正面から答え続けることが、審判のレベルを上げ、テクノロジーの導入を促し、結果としてJリーグ全体を強くする。
広島のクラブがJリーグに意見を申し立てるのは、まさにその第一歩だ。応援したい。
そして僕らサポーターは、SNSで審判を罵倒するのではなく、「プロセスを明らかにしてくれ」と声を上げ続ける。それが、僕らにできる一番建設的なことだと思う。
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参照記事
- サンフレ、清水戦のノーゴール判定巡り意見申し立てへ(中国新聞)
- 「また誤審ですか…」「入ってません」広島vs清水の”ノーゴール判定”でSNS大論争!ゴールライン上の判別困難シーン(ABEMA TIMES)
- サンフレッチェ広島対清水エスパルス戦でのノーゴール判定が議論を呼ぶ。FWジャーメイン良のシュートはラインを割っていなかったという判定に(フットボールチャンネル)
- 大迫敬介がPK止めた!連敗もストップ! またも判定に苦しんだ広島、PK戦で清水に勝利(ゲキサカ)
- [サンフレッチェ広島対清水エスパルスでゴール判定をめぐる微妙な判定が発生 ジャーメイン良のシュートはノーゴール?(ドメサカブログ)](https://blog.domesoccer.jp/archives/60248861.html
