木下康介が後半頭から先制ゴールを叩き込み、「今夜こそ止める」という気概は十分に伝わってきました。しかし84分、物議を醸したPKで同点に追いつかれると、アディショナルタイムに大迫勇也にとどめを刺された。神戸 2-1 広島――サンフレッチェ広島は今季ワーストの3連敗を喫し、ガウル体制最大の正念場を迎えています。
試合結果
| チーム | 前半 | 後半 | 合計 |
|---|---|---|---|
| ヴィッセル神戸 | 0 | 2 | 2 |
| サンフレッチェ広島 | 0 | 1 | 1 |
得点者:
- 49分 木下康介(広島)
- 84分 扇原貴宏(神戸)※PK
- 90+4分 大迫勇也(神戸)
会場: ノエビアスタジアム神戸 観客数: 19,200人
試合スタッツ
| 項目 | 神戸 | 広島 |
|---|---|---|
| シュート | 10 | 12 |
| コーナーキック | 2 | 5 |
| ポゼッション | 57.7% | 42.3% |
| イエローカード | 3 | 0 |
試合の流れ
前半――空中戦と競り合いの消耗戦
互いに警戒心の強い立ち上がりでした。神戸は元広島指揮官スキッベ監督の戦術的嗅覚で広島の出どころを丁寧に消し、広島はその包囲網をショートパスで打開しようと試みるも、縦への推進力が出ない。
解説の播戸竜二さんが「空中戦のボールだったり、競りボールが多くて、シュートまであまりいい形でいけなかった」と表現したように、前半45分間はどちらにも決定的な場面はほぼ生まれませんでした。
広島のシュート数はCKも含めれば神戸を上回るペース(今季累積xGは神戸10.6に対し広島11.4と広島がやや優位)でしたが、この日は形をつくりきれない場面が続きました。スコアレスで折り返し、後半勝負の様相を呈します。
後半――先制するも、PKと終了直前の一撃に沈む
49分、木下康介が先制
後半立ち上がりから広島は前線の強度を上げ、4分(試合時間49分)に木下康介がゴール。中盤でのプレスから素早い縦への展開が生まれ、木下が落ち着いて流し込みました。今季のリーグ戦でも存在感を増す木下が、アウェーの地で先制点をもたらします。
後半に入って広島のパスワークのテンポは上がり、決してボールを持てていなかったわけではありません(CK5本)。むしろ内容的には一時、広島がゲームを掌握していたとも言えます。
84分、問題のPKで同点
ここから試合が大きく動きます。エリア内でのプレーに対し、主審がPKを宣告。VARが入っていたにもかかわらず判定が覆らず、扇原貴宏が冷静に決めました。
このPKに対しては試合後も疑問の声が上がっています。シュートデータを見ても広島が上回っていた時間帯に生まれた判定だっただけに、「なぜVARが介入しなかったのか」という疑問は払拭されません。
90+4分、大迫が逆転弾
同点になってから広島はやや圧力をかけ切れず、アディショナルタイム4分、神戸FW大迫勇也が勝ち越し弾。試合終了の笛が鳴った瞬間、ノエスタに大きな歓声が響きました。
データで見るこの試合
| 項目 | 神戸 | 広島 |
|---|---|---|
| シュート | 10 | 12 |
| 枠内シュート | 2※ | 3※ |
| ポゼッション | 57.7% | 42.3% |
| コーナーキック | 2 | 5 |
| イエローカード | 3 | 0 |
※枠内シュート数は明日正確なデータを確認の上、反映させます。xG等の詳細データも後日追記予定です。
ポゼッションは神戸が上回ったものの、シュート数・枠内シュート・CKはいずれも広島が上回っています。アウェーの地でありながら、攻撃の量と精度では広島が主導権を握っていたと言えます。イエローカード0枚という規律あるプレーも光りました。それだけに、PKという1つの判定が試合を大きく変えたことが悔やまれます。
それでも2-1で敗れたのは、PKという1つの場面に試合が傾いたからです。内容と結果が乖離した試合として、今季の分析において重要なリファレンスになるでしょう。
両監督のコメント
ガウル監督(広島)は試合後、「チームはだいぶ良くなってきている」と手応えを口にし、チームの上昇を確信している様子でした。
一方、元広島指揮官のスキッベ監督(神戸)も「広島が勝っても不思議ではないゲームだった」という趣旨のコメントを残しています。勝者側の監督がそう認めるほど、この日の広島のパフォーマンスは水準を超えていました。
そして試合を決定づけたのは、84分のPKです。VARが導入されているにもかかわらず判定が覆ることはなく、多くの人が首をかしげる場面となりました。シュート数・CK・ポゼッション以外の指標でも広島が健闘を見せていただけに、「審判の判定がゲームの流れを壊してしまった」と言わざるを得ない側面があります。あのPKがなければ全く違う結末があったかもしれない――それだけの内容を広島は見せていました。
良かった点
木下康介の先制ゴール
今節スタメン起用に応え、先制点を生み出しました。起用に応え続ける木下の存在はガウル体制においてますます重要になっています。
ディフェンス面の安定
イエローカード0枚。プレッシャーのかかるアウェーゲームで、規律を保ったプレーができていた点は評価できます。ただし、簡単に抜かれるようなプレーも見られ、それが失点につながったりもしていました。この辺はもっともっと守備を安定させる必要があるでしょう。
後半の攻撃強度
播戸さんが「後半はなかなかいい攻撃をしていた」と評価したように、前半の固さが嘘のように後半は広島らしいテンポと縦への推進力が戻ってきました。
課題・改善点
PKを与える場面の回避
エリア内でのプレーに対する判断・ポジショニングは、今後より慎重に整理する必要があります。争議を招くプレーを減らすことが、勝ち点を積み重ねる上での現実的な対策です。
終了間際の集中力
同点になってからの約10分、試合を落ち着かせる術がなかった。アウェーで同点になった後の「ドローで終わらせる力」を身につけることも、勝ち点を積む上では重要です。
前半の攻撃構築
後半に比べ、前半は攻撃のリズムが出ませんでした。相手に研究された際の「前半の引き出し」を増やすことが、次の課題です。
次節に向けて
広島は次節まで約1週間のインターバルがあります。ホームのエディオンピースウイング広島でアビスパ福岡を迎え撃ちます。
3連敗という数字は重いですが、内容を見れば「崩壊」ではなく「紙一重の敗戦」が続いています。今夜の試合でも広島はxGで上回り、シュートも多かった。課題は正確に言えば「結果への変換」と「一瞬の集中切れ」です。
ガウル監督は試合後のインタビューで「選択肢がなかった部分もあった」と率直に話しつつ、大迫敬介(日本代表から復帰予定)・東俊希ら主力が戻ってくることで「状況は改善していく」と前向きな姿勢を見せました。
紫の反撃は、ピースウイングのホームゲームから始まります。
※本記事は速報版です。枠内シュート数などのデータ確認・加筆を行った正式版レビューを明日公開予定です。
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まとめ
木下康介の先制弾は本物でした。後半の戦いぶりも、決して弱さを示したものではありません。数字がそれを証明しています。
ただ、1本のPKが試合を変えた。それが今夜の現実です。
3連敗という事実から目を背けるつもりはありません。でも、サンフレッチェ広島がこのまま沈むチームだとも思っていません。ガウル監督が言う通り、状況は変わっていく。大迫敬介が戻り、東俊希のフィジカルが上がり、紫の戦力がそろうとき、このチームは必ずもう一度輝きます。
ホームで福岡を迎えるその日まで、一緒に信じましょう。
文:sanfrecce-hiroshima.com編集部
