最初に、ひとつお断りしておきます。
この文章は、アビスパ福岡や、どこかのクラブのサポーターをディスるつもりで書いたものではありません。
Jリーグのクラブがそれぞれの地域に根を張って、みんなが楽しく盛り上がっていくには、どうすればいいんだろう。そんなことを考えながら書きました。
中身は、特にサポーターのあり方についての考えです。でも、どこか特定のクラブのサポーターに向けたものではありません。もちろん、広島のサポーターである僕自身も含めての話です。
そこをまず、ご承知おきください。
福岡戦のあと、ずっと引っかかっていることがあるんです
9月19日のアビスパ福岡戦。0-1で勝ちました。東俊希のゴールで、2連勝です。
でも、あの試合のことを思い出すと、最初に浮かぶのはゴールではありません。
前半22分ごろ、福岡の上島拓巳のスライディングが松本泰志の膝に入った。最初はイエロー、VARが入ってレッドに変わりました。松本は一度プレーに戻ったものの、30分に担架で運ばれてピッチを出ます。試合後はベンチで松葉杖をついていた、と中国新聞が伝えています。
こういう試合のあとって、どうしても言い合いになりますよね。
「あっちのクラブはいつもそうだ」「いや、そっちだって」。
その気持ちは分かるんです。僕も、あのタックルは酷いと思いました。でも、何日か経って、少し冷えた頭で考えているうちに、別のことが気になってきました。
あんなサポーター同士の言い合いは何も生まない。むしろ遺恨を作るばかりだ。
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クラブの形を決めているのは、実はサポーターなんじゃないか
クラブの名前やエンブレムは、クラブが決めます。監督も、補強も、フロントが決める。
でも、そのクラブが「どんなクラブか」という手触りは、それだけでは決まらない気がするんです。
サポーターが何を求めているか。これが、じわじわ効いてくる。
サポーターが「とにかく勝てばいい」と求めれば、クラブは勝つためなら何でもするチームに寄っていく。「フェアに戦って、勝とうとする姿」を求めれば、クラブもそこを大事にするようになる。「地元と一緒に育っていくこと」を求めれば、クラブは街に根を張ろうとする。
選手もスタッフも、スタンドの空気をちゃんと感じていますからね。何に拍手が起きて、何にため息が出るのか。そういう一つひとつが、「このクラブではこれが許される」「これは許されない」という線になっていく。
だから、クラブの形を決めているのは、実は僕らサポーターなんだと思います。
だからこそ、ベクトルは自分たちに向けたい
そう考えると、自分たちのクラブの選手がひどいプレーをしたときに、「いやいや、お前たちのほうがひどかったじゃないか」と他のクラブを持ち出すのは、本当に不毛です。
比べて勝っても、自分たちのクラブは一ミリも良くならない。
こういうときこそ、ベクトルを自分たちのクラブに向けるべきなんですよね。
じゃあ、広島はどうだったか。
あの福岡戦で荒れていたのは、福岡の側だけではありません。前半、鈴木章斗がプレスバックしたときに、福岡の見木友哉のアキレス腱のあたりを踏んでしまって、オンフィールドレビューの末にイエローを受けています(ゲキサカ)。相手の体を危ない目に遭わせたことに変わりはない。
僕は広島のサポーターなので、まずそこから目をそらさないでいたい。
相手のファウルを数えるより、自分たちのファウルを見るほうが、ずっとしんどいです。
でも、それをやれるサポーターがいるクラブは、きっと強くなる。まあ、僕もえらそうなことを言えた義理ではないんですが。
勝つより大事なものがある、と僕は本気で思っています
相手へのリスペクト。スポーツマンシップ。フェアプレー。
これは当たり前のことですよね。わざわざ書くのが恥ずかしいくらい当たり前のことです。
それを度外視して勝っても、僕は意味がないと思っています。
強く当たるな、という話ではありません。球際で戦うのはサッカーの魅力です。広島だって激しく行くチームです。ただ、相手の選手生命を危うくするようなプレーと、ボールを奪いにいくプレーの間には、ちゃんと線がある。その線の内側で、ぎりぎりまで戦って勝つ。それを見たいんです。
勝ち点3は、そのシーズンが終われば数字になって消えていく。
でも、「あのクラブはこういうクラブだ」という評判は、何十年も残ります。
それで落ちるなら、落ちればいい(と、あえて言います)
フェアに戦って、それでも勝てずにカテゴリーが下がるなら、それは受け止めるべきだと僕は思っています。汚いことをして上に残るくらいなら、下がったほうがいい。
降格は、クラブにとって本当につらいことです。それは分かっています。
でも、下がってしまうということは、今のカテゴリーが、そのクラブに今はまだふさわしくないということなんだと思う。
誤解のないように書いておくと、落ちたクラブやそのサポーターを突き放したいわけではありません。むしろ逆です。落ちたなら、そこからもう一回、上がってくればいい。
広島も、2002年と2007年にJ2へ落ちています。
2002年はクラブにとって初めてのJ2降格でした。2007年はJ1で16位になり、入れ替え戦で京都サンガF.C.に負けて、2度目の降格です。
あのとき僕は、仕方ないと思いました。
クラブの規模、経済的な体力、それからサポーターの少なさ。今の広島とは、いろんなものが違っていました。落ちるだけの理由は、正直、あったと思う。
それでも、サポーターはそういうときこそ一緒に戦うべきなんです。
降格は「もう一回、経営からやり直せ」というサインなんですよね
カテゴリーが落ちるというのは、選手の問題だけではないと思っています。
もう一回、経営をやり直せ、ということなんです。
クラブのコンセプト、ビジョン、ミッション。自分たちは何者で、どこへ向かうのか。それをきちんと整理し直したうえで、もう一回やり直そう。降格は、そういうメッセージとして真摯に受け止めるべきだと思います。
2007年に落ちたとき、広島は監督を代えませんでした。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を続投させ、佐藤寿人も残った。降格したクラブは監督を代えることが多いので、これは異例の続投だったそうです(フットボールチャンネル)。
翌2008年、広島はJ2で優勝して、1年でJ1に戻ってきます。2012年には、J1で初めて優勝しました。
もちろん、あの続投だけで全部が説明できるわけではありません。ただ、落ちたときに「自分たちは何をやりたいクラブなのか」を手放さなかった。そのことは、今の広島につながっている気がします。
自分たちの街にこのクラブがあることが、誇りだと思えるように
選手が相手をリスペクトする。サポーターと選手が信頼で結ばれている。
それだけでは足りなくて、社長やスタッフ、それから街の人たち、応援してくれる企業の人たちまで含めて、「自分たちの街にこのクラブがあることが誇りだ」と思えること。
僕は、サンフレッチェ広島にそういうクラブであってほしいと思っています。でも、サンフレッチェ広島だけじゃない。Jリーグのクラブがある、すべての街がそうあるべきだなと思うんです。
そうすると、とっても素敵な地域になる。そして、その地域と地域がつながって、素晴らしいJリーグに、素晴らしい日本になるんじゃないかと思っています。
そして、それを決めるのは、たぶん僕らサポーターです。
松本泰志の膝が、早く良くなりますように。
さて、僕らは、このクラブに何を求めているんだろう。まあ、答えはもう出ている気もしますが。
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参考・出典
- ゲキサカ「福岡vs広島は荒れ模様…福岡に前半だけで2人の退場者」(2026年9月19日)
- サッカーダイジェストWeb「まさかの事態…福岡が前半だけで2人退場」(2026年9月19日)
- 中国新聞デジタル「松本泰志、右膝痛め交代 ベンチで松葉づえ」(2026年9月19日)
- サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「明治安田J1 第8節 アビスパ福岡 vs サンフレッチェ広島 試合データ」
- Jリーグ公式「広島『勝率100%の好相性の大会』【大会ヒストリー:FUJI XEROX SUPER CUP】」(2016年2月3日)※2007年の16位・入れ替え戦での降格、2008年の1年でのJ1復帰
- フットボールチャンネル「J1・J2入れ替え戦およびJ1参入プレーオフ歴代試合結果&出場チーム翌シーズン成績」※2007年入れ替え戦(京都2-1広島、広島0-0京都)、2008年J2優勝
- フットボールチャンネル「『J2沼』なんて関係なし! J2降格1年目に無双した最強チーム6選」※降格後のペトロヴィッチ監督の異例の続投、佐藤寿人の残留
- 広島県「わたしたちの誇り『サンフレッチェ広島』は創立30周年!」(2022年)※2002年のクラブ初のJ2降格、2007年の2度目の降格
- フットボールチャンネル「2012年Jリーグ。広島が初優勝…【Jリーグ平成全史(20)】」※2012年、森保一監督の下でクラブ史上初のJ1優勝
