ガウルの進化か、ミシャの美学か——攻撃サッカー対決、リベンジの舞台はピースウイング【サンフレッチェ広島vs名古屋グランパス|J1百年構想リーグ第18節プレビュー|2026年5月23日】

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J1百年構想リーグ WESTグループ 第18節
2026年5月23日(土)14:00キックオフ
エディオンピースウイング広島

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目次

この試合、ただの順位争いじゃない

この名古屋戦を、今シーズンのサンフレッチェ広島にとって最も重要な一戦だと思っています。

順位表を見れば、名古屋はWEST2位(勝点31)、広島はWEST4位(勝点27)。4ポイント差。勝てば1ポイント差に詰まり、負ければ7ポイント差に広がる。数字だけ見れば「大事な上位対決」です。

でも、この試合の本当の意味は順位表にはありません。

ミハイロ・ペトロヴィッチの攻撃サッカーと、バルトシュ・ガウルの現代型トータルフットボール。Jリーグを代表する二つの攻撃哲学が、ピースウイングでぶつかる。

しかも広島にとっては、第7節のアウェイで喫した2-1の敗戦のリベンジマッチです。


ミシャの美学——20年かけて日本に根づいた「3-4-2-1」

ミハイロ・ペトロヴィッチ。通称ミシャ。

2006年にサンフレッチェ広島の監督に就任してから、もう20年日本のサッカーシーンにいます。浦和、札幌、そして名古屋。どのクラブでも一貫して、「攻撃こそ最大の防御」を体現するサッカーを貫いてきました。

ミシャの代名詞は3バックからのビルドアップと、シャドーの自由な動き。ウイングバックが高い位置を取り、中盤が流動的にポジションを入れ替えながら、相手の守備組織を「動かして」崩す。美しく、ロマンに満ちた攻撃サッカーです。

今シーズンの名古屋はその哲学が結実しています。得点1.71/試合はリーグ1位。山岸祐也が9ゴール、木村勇大が8ゴール。この2トップだけで17ゴールを叩き込んでいます。中山克広がアシスト7でチームトップ。攻撃のメカニズムが明確で、破壊力がある。

ただし、前節のセレッソ大阪戦で1-6の大敗を喫しました。ミシャのサッカーはいつもそうです。美しく勝つときもあれば、壮絶に崩れるときもある。攻撃に人数をかける分、裏を突かれたときのリスクは常に背中合わせです。


ガウルの進化——「100%問題」を解きつつある広島

一方のガウル監督。ポーランド系ドイツ人。RBライプツィヒの育成部門出身。就任からまだ半年足らずの若き指揮官です。

以前このブログで書きましたが、ガウル監督は日本に来て「100%問題」に直面しました。日本人選手は監督の指示を100%忠実に実行しようとする。ドイツの選手なら70%は指示に従い、30%は状況判断で柔軟に変える。その「30%の即興」がないと、想定外の局面で判断が遅れる。

この問題を解くために、ガウルは4つの攻撃パターンを仕込みました。ビルドアップからの崩し、ロングフィード一発、東俊希のサイドアタック、ポゼッションからのプレス回避。どの状況でも「次の一手」が用意されている。選手が迷わなくていい設計です。

その成果はデータに表れています。

指標広島名古屋
xG(ゴール期待値)1.9101.431
シュート/試合16.3(リーグ1位)13.4
ハイプレッシング51.4%47.5%
カウンタープレス55.2%45.9%
得点/試合1.411.71

xGでは広島が圧倒しています。1試合平均1.910というゴール期待値は、「毎試合ほぼ2点分のチャンスを作っている」ことを意味します。名古屋の1.431を大きく上回る。

ところが、実際の得点は名古屋の方が多い。広島はチャンスを作れるのに決めきれない。名古屋はチャンスは少ないが確実に決める。この効率差が、現時点での勝点4の差に表れています。

ガウルのサッカーは「仕組み」としては名古屋を上回りつつある。あとは「仕上げ」——ゴール前での決定力だけです。


京都4-0からの勢い vs セレッソ1-6からの動揺

両チームの直近の試合が、この一戦のコンディションを物語っています。

広島:京都サンガ 0-4(第17節・5月17日)

加藤陸次樹の11番が躍動し、4ゴールの圧勝。前節の記事で書いた通り、第4節の「ATの悪夢」を取り返す完勝でした。2連勝で勢いに乗っています。

名古屋:セレッソ大阪 6-1(第17節・5月17日)

3連勝で波に乗っていた名古屋が、まさかの1-6大敗。ミシャのサッカーの「もろさ」が露呈した試合です。攻撃に出た裏を突かれ、一度崩れると立て直しがきかなくなる。あの大敗から6日後のアウェイ戦。メンタル面の回復が間に合うかどうか。


第7節のリベンジ——あの2-1をひっくり返す

忘れてはいけないのが、第7節の1stレグです。

3月18日、豊田スタジアム。名古屋 2-1 広島。

あの試合は、ガウル体制がまだ噛み合っていない時期でした。前半の硬さが出て、先制を許し、追いつくも突き放された。「100%問題」が色濃く残っていた頃の試合です。

あれから2ヶ月。広島は変わりました。

G大阪戦では平均ボール奪取ライン43.4mを記録し、「前に出る」姿勢を取り戻しました。京都戦では4つの攻撃パターンがすべて機能し、4-0の完勝。ガウルが仕込んだ「現代型トータルフットボール」が、試合を重ねるごとに形になってきています。

あの第7節の広島と、今の広島は、別のチームです。


注目の個人マッチアップ

山岸祐也・木村勇大 vs 広島守備陣

名古屋の最大の武器は、山岸祐也(9ゴール)と木村勇大(8ゴール)の2トップです。2人で17ゴール。これはリーグでも屈指の破壊力です。

広島としては、守備CBPがリーグ18位と低い数値を示しており、ここが不安材料です。ただし、京都戦ではクリーンシートを達成しています。この強力2トップをどう封じるかが、広島守備陣の最大の課題です。

東俊希——攻撃の起点

3ゴール5アシストの東俊希が、広島の攻撃の心臓です。G大阪戦の決勝ゴール、京都戦でのチャンスメイク。ガウル監督の「パターン3」——サイドアタックからのカットイン、縦突破、クロスの選択肢。名古屋のウイングバックとのマッチアップが、この試合のカギを握ると見ています。

大迫敬介——W杯を見据えた守護神

W杯メンバーに選出された大迫敬介。京都戦でクリーンシートを達成し、好調を維持しています。名古屋の強力2トップを相手に、どんなセービングを見せてくれるか。W杯前最後のホームゲームで、存在感を示してほしいです。


広島の懸念材料——主力の離脱と不在

気がかりなのが、ここ数試合でメンバーから外れている選手が複数いることです。

キム・ジュソンは5月1日の韓国代表オーストリア戦(W杯壮行試合)で右膝を負傷し、W杯メンバーからも落選。京都戦でもメンバー外でした。荒木隼人も、5月2日の岡山戦で63分に途中交代して以降、左膝の負傷で戦列を離れています。

さらに、トルガイ・アルスランと中島洋太朗もここ2試合メンバーに入っていません。アルスランは5月2日の岡山戦まで9試合に出場していただけに、突然のメンバー外は気になるところです。

ただ、京都戦で4-0を叩き出したのもこのメンバーです。ガウルの「誰が出ても同じサッカーができる」という設計思想が問われる試合でもあります。


この試合の本質——「美学」対「進化」

ミシャのサッカーは「美学」です。20年間ブレずに貫いてきた攻撃哲学。完成度が高く、はまったときの破壊力は凄まじい。でも、その美学には脆さが伴う。セレッソ戦の1-6がそれを証明しています。

ガウルのサッカーは「進化」です。まだ半年。完成していません。前半と後半で別チームになることもある。でも、試合を重ねるごとに、選手たちが「30%の即興」を身につけ始めている。xGリーグ最高水準が示す通り、仕組みとしてはもう名古屋を上回っています。

完成された美学か、進化の途上にある未来か。

僕はガウルの進化に賭けたい。

京都戦の4-0は、単なる大勝ではありませんでした。あれは「このサッカーが正しい」という証明の試合でした。G大阪戦で「前に出る」を取り戻し、京都戦で「圧倒する」を実現した。その延長線上に、この名古屋戦があります。

ピースウイングで、ガウルの広島が見せる答えを楽しみにしています。


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