前日に書いたことを、僕は思い出していた
2026年9月2日、エディオンピースウイング広島。J1第5節、サンフレッチェ広島対名古屋グランパス。晴れ、気温30.8℃、観客26,892人。平日のナイターで、スタンドは埋まっていました。
結果は3-0の快勝です。加藤陸次樹、鈴木章斗、セバスティアン アレー。前線の3人がそろって決めました。
でも、僕が書きたいのはそこではありません。この試合、71分まで0-0だったということです。
前日の9月1日、僕はこのブログで「広島の勝てる時と勝てない時の差はどこにあるのか」という記事を出しました。結論はこうでした。広島はJ1で一番チャンスを作っている。足りないのは最後の一本だけだ。上振れは要らない、普通に決めれば点は増える。
その記事を出した翌日の試合で、また0-0のまま時間が過ぎていく。前半が終わっても0-0、後半に入っても0-0。60分を過ぎ、70分が近づいてもスコアは動かない。僕はDAZNの前で、自分が書いた文章を思い出していました。
そこからの19分間で、試合は終わりました。
前半は、引き分けた2試合をなぞっていた
序盤から主導権を握ったのは広島でした。ボールを持ち、後方からのロングフィードも交ぜながら相手ゴールに迫っていく。ただ、最後のパスとフィニッシュの精度が足りず、ネットは揺れない。名古屋も次第に前に出てきますが、シュートまで持ち込めない。0-0で前半終了。
この45分は、川崎F戦やG大阪戦で見た景色とほとんど同じでした。前回の記事の言葉を借りれば「作ったのに入らない」試合です。
後半に入っても、しばらくは同じ流れが続きます。53分、名古屋が後方から丁寧につないで高嶺朋樹が左からクロス、和泉竜司のシュートは左ポストを直撃。こぼれ球を山岸祐也が押し込んでネットを揺らしましたが、VARが介入し、時間をかけた確認の末にオフサイドでノーゴールとなりました。64分には稲垣祥のスルーパスで木村勇大が抜け出しましたが、至近距離からのシュートはブロック。
広島も69分、新井直人が右から上げたクロスをファーサイドで鈴木章斗が収め、落としを受けたアレーが深い切り返しからシュート。これはGKピサノ アレックス幸冬堀尾に止められました。
ここまでの試合を、もし70分で切り取っていたら。開幕から3試合連続の引き分けです。
72分、80分、90+1分
72分。鈴木章斗の落としから川辺駿が右足で低いミドルシュートを放ちます。これがペナルティエリア中央にいた加藤陸次樹の足下に入り、加藤が押し込みました。今季2得点目。公式記録上、このゴールにアシストはついていません。川辺のシュートのこぼれを、そこにいた人間が押し込んだ形です。
そして加藤は、この1分後にピッチを退きます。
80分。中島洋太朗の縦パスをアレーが中央で引き出し、ボックス内の左へ展開。受けた鈴木章斗が右足で狙うと、カーブのかかったシュートは右ポストを叩いてネットに吸い込まれました。今季4ゴール目です。
90+1分。鮎川峻がドリブルで持ち上がり、ペナルティエリア左へ走るアレーへパス。やや後ろに入りましたが、アレーは反転トラップから左足でニア上に突き刺しました。今季2点目。
3つに共通しているのは、フィニッシュがすべてペナルティエリアの中で起きていることです。加藤はエリア中央、鈴木はエリア左でフリー、アレーはエリア左へ走り込んだところ。遠目から狙って入ったゴールは、一つもありません。
打った16本のうち、7本が枠へ
チームスタッツです(スポーツナビから)。
| 項目 | 広島 | 名古屋 |
|---|---|---|
| 保持率 | 52% | 48% |
| シュート | 16本 | 4本 |
| 枠内シュート | 7本 | 1本 |
| パス(成功率) | 549本(82.9%) | 498本(79.5%) |
| 走行距離 | 111.201km | 108.198km |
| スプリント | 98回 | 100回 |
| CK | 2本 | 1本 |
| FK | 9本 | 13本 |
枠に飛んだ7本のうち、3本が入りました。
0点で終わった試合が2つ続いたあとです。この数字は、小さくないと思います。
僕には、交代カードが変えたように見えた。一方、ガウル監督は
広島の交代を時系列で並べます。
- 46分(後半開始):川村拓夢 → セバスティアン アレー
- 73分:川辺駿 → 中島洋太朗、加藤陸次樹 → 鮎川峻
- 85分:東俊希 → 志知孝明
- 90分:鈴木章斗 → 越道草太
ここで得点の関与を重ねてみます。2点目は中島洋太朗の縦パスからアレーを経由して鈴木へ。3点目は鮎川峻からアレーへ。つまり2点目と3点目は、後半に入った3人(アレー・中島・鮎川)だけで作られています。
アレーの個人スタッツも見てみます。出場は後半45分プラスアディショナルタイムのみ。その中でシュート2本、枠内1本、1得点1アシスト、こぼれ球奪取4回。走行距離5.718km、スプリント4回。ちなみに川村拓夢は前半のみの出場でシュート0本、加藤陸次樹は2本打って2本とも枠内で1得点でした。
僕がこの試合を重く見るのは、ここです。
もし3点が個人の閃きだけで生まれたのなら、再現性は期待できません。次の試合でまた同じことが起きる保証はない。でも「誰を、いつ入れるか」で終盤のチャンスの質が変わったのだとしたら、それは次の試合でも使える手です。気温30.8℃の平日ナイターで、後ろから来る選手が効く条件でもありました。
ただし、これはあくまで僕の読みです。試合後、アレーの活躍をどう評価するかと問われたガウル監督は、アレー個人についてはほとんど語っていません。監督が話したのは、相手にきちんとしたマンツーマンで対応されるとチャンスは簡単に作れないということ、後半は推進力を出すためにまず守備のところからしっかり入ったこと、そして1つ目のゴールが生まれれば、2つ目、3つ目は生まれやすかったのではないか、ということでした。
つまり監督の説明は、「誰を入れたか」ではなく「後半の入り方と、先制点の連鎖」です。同じ試合を見て、僕は交代カードを見ていました。監督は別のものを見ていたことになります。
守備のほうは、前回書いたとおりに続いている
名古屋のシュートはわずか4本、枠内は1本だけです。大内一生はその枠内の1本を止め、完封しました。
これについては、ガウル監督の説明がはっきりしています。名古屋が独特の形でボールを握って圧力をかけてくることを見越して、守備のやり方を考えて組んだ。それがハマったことで、ボールを持っていない時間帯も自分たちが試合をコントロールできていた。試合後、監督はそう振り返っています。
前回の記事で、広島の被ゴール期待値0.730がJ1で最も低いという話を書きました。この試合は、その内容がそのままスコアに出た形と言っていいと思います。
ただし、53分の場面には触れておかなければフェアではありません。山岸祐也が押し込んだあのボールがオフサイドでなかったら、名古屋が先制していた試合です。VARが時間をかけて確認したということは、明白な判定ではなかったということでもあります。「完璧に封じ込めた」と書くのは、少し違う気がします。
監督は「決定力」とは言わなかった
ここまで書いてきて、正直に記しておかなければならないことがあります。試合後のガウル監督の言葉は、僕の整理と少し違いました。
前半について、監督はゴール前までボールを運べていたことは認めています。その上で、「そこからアイディアが生まれなくて」ゴールに至らなかった、と説明しています。
僕は前半を「作ったのに入らない」試合として書きました。最後の一本の問題としてです。でも監督の言い方は、そもそもシュートを打つ形まで作りきれていなかった、というふうにも読めます。エリアには入っていたけれど、その先の手がなかった。これは決定力の話とは別の問題です。
さらに監督は、攻撃についてはもっとチャンスを作れるはずだし、もっとゴールを奪えるはずだ、という趣旨のことも話しています。3-0で勝った試合の後に、です。チャンスの量そのものが十分だとは考えていないということです。
前回の記事で、僕は広島が勝てない試合には二通りあると書きました。作れたのに入らない川崎F戦型と、作る質が落ちてその上入らないG大阪戦型です。監督の見立ては、どちらかといえば後者に近い。
どちらが正しいのかは、データが出れば見当がつきます。前半にどれだけのゴール期待値を積めていたのか。高ければ「作ったのに入らなかった」という僕の読みですし、低ければ「そもそも作れていなかった」という監督の読みです。答え合わせの材料が、一つ増えました。
これが上振れである可能性は、消えていない
もうひとつ、冷静なことを書いておきます。
前回の記事で、僕は町田のシュート成功率21.3%について、それがシーズンを通して続くことはまずないと書きました。他チームに向けた物差しは、自分たちにも当てなければいけません。16本打って3本が入ったこの試合が、これから続く水準なのかどうかは分かりません。5試合という標本は、やはり短いのです。
予測どおりの試合が、ひとつ出た
これで勝ち点11、3勝2分、開幕から5戦無敗です。
前回の記事の結論は「今の広島に必要なのは、何かを変えることではなく、この内容を続けること」でした。名古屋戦で起きたのは、その一つの答えだと思っています。前半に起きたことは変わっていません。ゴール前まで運んで、入らない。その45分は今回もありました。変わったのは、後半に入ってから決まるべきものが決まったということです。
たった1試合です。これで決定力の問題が解決したとは、まったく思っていません。それどころか、監督の言葉を読むかぎり、その問題を「決定力」と呼ぶことが正しいのかどうかも、まだ確かではありません。
それでも、予測どおりの試合がひとつ出ました。そして僕の目には、そのきっかけが偶然ではなく交代カードに映りました。この二つは、次につながる材料だと思います。
次は9月6日、アウェイでファジアーノ岡山。中3日の連戦です。Football LABのデータが出そろったら、この試合のゴール期待値で答え合わせをするつもりです。前半のxGがいくつだったか。そこに、僕と監督のどちらの見立てが近いかの答えがあります。
前回の記事はこちらです。広島の勝てる時と勝てない時の差はどこにあるのか?
🎫 週末のJ1をtotoでも楽しむなら
▶ 楽天totoで購入する
🔻 9月6日の岡山戦をライブで観るなら
▶ DAZNで観る
※スポーツくじの購入は19歳以上からです。無理のない範囲で楽しみましょう。
参考・出典
- スポーツナビ「J1 第5節 サンフレッチェ広島 vs. 名古屋グランパス」スタッツ・試合経過(https://soccer.yahoo.co.jp/jleague/category/j1/game/2026090223/stats?gk=2)
- Jリーグ公式サイト「明治安田J1 第5節 サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス」バルトシュ ガウル監督 試合後コメント(https://www.jleague.jp/match/j1/2026/090223/#review)
- Football LAB「名古屋グランパス 2026/27 マッチレポート 9月2日 vs 広島」(https://www.football-lab.jp/nago/report)
- Football LAB「サンフレッチェ広島 2026/27 試合日程・結果」(https://www.football-lab.jp/hiro/match/)
- ゲキサカ「後半に攻撃爆発! 広島が連勝中の名古屋を3-0で下して3試合ぶり白星&無敗キープ」(2026年9月2日)
- サッカーキング「広島が3戦ぶりの白星&無敗維持! 後半に一挙3ゴール…名古屋は3連勝ならず」(2026年9月2日)
- サッカーマガジンWEB「後半登場のアレーのポストワークが効いて攻撃が活性化。広島が加藤、鈴木、アレーのゴールで名古屋を下す!」(2026年9月2日)
- 中日スポーツ「名古屋グランパス、後半に3失点で今季3敗目」(2026年9月2日)
※チームスタッツ・個人スタッツはスポーツナビ掲載の数値(2026年9月3日取得)です。Football LABのシュート・ゴール期待値・チャンスビルディングポイントは同日時点で第5節分が未公開のため、本記事では使用していません。
