平均ボール奪取ライン43.4m——「前に出る」を取り戻した90分。東俊希の一撃で3連敗を断ち切った【ガンバ大阪0-1サンフレッチェ広島|J1第16節レビュー|2026年5月10日】

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目次

試合情報

大会明治安田J1百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第16節
日時2026年5月10日(土)15:00キックオフ
会場パナソニック スタジアム 吹田
結果ガンバ大阪 0-1 サンフレッチェ広島
得点東俊希(68分)
観客数28,360人

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僕はこの試合を見て、確信しました。広島は、強くなっている。

福岡にPK負け。岡山に0-1。神戸にPK負け。3試合連続で勝てなかった。でも僕はずっと書いてきました。「内容は確実に良くなっている」「このサッカーを続ければ結果はついてくる」と。今日、それが証明されました。

広島は「強い」のではなく、「強くなっている最中」です。完成品じゃない。だからこそ面白いし、だからこそこの1勝が重い。

平均ボール奪取ライン43.4m。 この数字を見て、背筋が伸びました。ガンバの29.7mと比べて、実に13.7mも前。敵陣でのボール奪取率19%。ガンバはたった3%です。

「前に出る」。言葉にすれば簡単ですが、アウェイのパナソニック スタジアムで、3連敗中のチームがこれをやったんです。勇気がなければできない。自信がなければできない。ガウル監督が植え付けてきたものが、苦しい時間を経て、ようやく「形」になって見えた90分でした。

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前半:ゼロ対ゼロの裏に隠れた広島の意図

前半はスコアレスでした。でも、中身は広島の意図がはっきり見えるものでした。

前線からのプレスでガンバのビルドアップを制限し、特に川辺駿の立ち位置が効いていました。相手がどこに出したいかを先に読んで、そこに立つ。6番が中盤の水を止めることで、ガンバは前線にボールを届けるルートを見つけられなかった。

25分、ガンバにチャンスが訪れます。左サイドの奥抜侃志が仕掛けて間を通し、山下諒也が走り出す。惜しいシーンでした。でも逆に言えば、ガンバの前半の決定機はこれくらい。前線のヒュメットと食野亮太郎は、広島の守備ブロックの前でほとんど仕事をさせてもらえませんでした。

26分には広島。東俊希のクロスが流れたところを、逆サイドの中野就斗がシュート。39分にはガンバが中谷進之介のパスからヒュメットのポストプレー、山下、再びヒュメットとつないで最後は奥抜。決定機でしたが、ここで広島の守備の集中力が出ました。

41分、佐々木翔から東へつないで、中村草太のシャープなターン。加藤陸次樹が切り返して逆足の左足シュート。中村のパスの質、加藤の切り返しのスピード、攻撃の速さが光ったシーンです。

前半を一言で言えば、「広島がハメに行き、ガンバが出口を探した45分」です。 スコアレスだったのは、広島がまだ最後の一刺しを見つけられなかったから。でも、試合の主導権を握っていたのは間違いなく広島でした。


後半:修正力と東俊希のメンタリティ

後半、広島は明確に修正をかけてきます。

選手のインタビューで「前半は結構相手の選手がいいポジショニング取って、結構やられるシーンが多かった」と振り返っていましたが、「後半は修正できて、一人一人がセカンドボールも拾えていた」。この修正力が、ガウル広島の真骨頂です。

56分、2枚替え。加藤陸次樹に代えてジャーメイン良、木下康介に代えて鈴木章斗。前線のエネルギーを入れ替えます。

一方のガンバも動きます。46分に奥抜に代えて南野遥海、65分にはヒュメットに代えて宇佐美貴史を投入。ACL決勝(vs アル・ナスル)を控えてベンチスタートだった宇佐美が、ここで切り札としてピッチに入ってきました。

そして、68分。

セカンドボールの奪い合いから、広島が前に運ぶ。そして東俊希が最後まであの位置までスプリントをかけて入り込み——ゴールネットを揺らしました。

その後もガンバは攻勢を強めます。72分にウェルトンと初瀬亮、79分には倉田秋と切り札を次々と投入。そして宇佐美貴史が本領を発揮しようとした82分——。

塩谷司のシュートブロック。

宇佐美がペナルティエリア付近で放ったシュートを、塩谷が読み切ってブロックした場面。あの読み、あの一歩の速さは、37歳のベテランが持つ「経験値」としか言いようがありません。危険なシュートコースに入るタイミング、体の向き、すべてが完璧でした。前半45分には高い位置から持ち上がってクロスを上げ、そして終盤のこのブロック。攻守両面で存在感を示した90分でした。

解説の木場さんが言っていました。「東もそうですし、チームとしても最後まで90分で勝ちに行くんだっていうところ」。東俊希はセレッソ戦でも決勝点を決めた時、「入る気しかしなかった」と語っていた選手です。このメンタリティの強さが、3連敗という苦しい状況で最も必要なものでした。

広島はチーム全体で最後まで守り切りました。


スタッツ比較

項目ガンバ大阪サンフレッチェ広島
シュート1112
枠内シュート54
xG(ゴール期待値)1.4320.973
ボール支配率53.7%46.3%
パス(成功率)476(78.4%)413(76.7%)
オフサイド20
コーナーキック31
ファウル166
タックル成功率54.5%72.2%

xGではガンバが1.432 vs 広島0.973。 さすがはガンバ、あれだけ押し込まれた展開でもしっかりチャンスは作ってきていました。一方で、広島のxG 0.973は本来のポテンシャルを考えれば物足りない数字です。あれだけ高い位置でボールを奪い、前線からプレスをかけていたなら、もっとゴール期待値を積み上げてもよかった。ここは今後の課題でしょう。ただ、勝ったのは広島だった。 それが、この試合のすべてです。

注目すべきはファウル数。ガンバの16ファウルは、広島のハイプレスに対してファウルでしか止められなかったことを示しています。広島のタックル成功率72.2%(ガンバは54.5%)が物語るように、広島はクリーンに、しかし激しくボールを奪い続けました。


ボール奪取位置比較——これが「取り戻した」証拠

エリアガンバ大阪サンフレッチェ広島
AT(アタッキングサード)3%19%
MT(ミドルサード)34%44%
DT(ディフェンシブサード)63%37%
平均ボール奪取ライン29.7m43.4m
ボール奪取回数6259

この数字が、今日の試合のすべてを語っています。

平均ボール奪取ライン43.4m。ガンバの29.7mと比較して、13.7mも前です。広島がいかに高い位置でボールを奪っていたか。アタッキングサードでの奪取率19%——5回に1回は、敵陣の最も深い位置でボールを奪っているということです。

勝てなかった3試合を思い出してください。福岡戦、岡山戦、神戸戦。あの時、ラインはここまで高かったでしょうか。相手の攻撃を受けて、引いて、跳ね返して——それでも結局、カウンターの一撃や、PKという不確実な勝負に持ち込まれて負けた。

この試合は違った。 最初からラインを押し上げ、相手の陣地で奪い、相手のゴールに近い位置から攻撃を始めた。ガウル監督が就任以来追求してきた「ハイプレス+高いライン」が、アウェイの、3連敗中の、精神的に最も追い込まれた試合で、最も純粋な形で発揮された。

これは偶然じゃありません。覚悟です。


中野就斗のスプリント20回——「走り切る」というチームの約束

スプリント回数トップは中野就斗の20回。ストッパーをやったりウイングバックをやったり、どこに配置されても推進力を発揮する男です。

東俊希は12回、山下は17回。広島は全員が走り続けるチームですが、今日は特に後半のセカンドボールへの反応が際立っていました。「後半は修正できて、一人一人がセカンドボールも拾えていた」——選手自身がそう振り返るように、ピッチ上の全員が「走り負けない」を体現していました。


ガンバ大阪の事情——ACL決勝を控えたジレンマ

ガンバ大阪はACLチャンピオンズリーグ2の決勝(vs アル・ナスル)を控えていました。宇佐美貴史とウェルトンがベンチスタートだったのは、おそらくACLへの配慮です。

もちろん、それを差し引いてもガンバは強いチームです。食野亮太郎の前線での仕掛け、山下諒也のスピード、途中出場の宇佐美の技術——いずれもJ1トップクラス。xG 1.432が示すように、ガンバの方がチャンスは多かった。

でも、今日は広島が上回った。 それだけのことです。言い訳のない勝利。純粋に、90分間の内容で勝ち取った1-0。


「自前の選手」が躍動する美しさ

試合後の解説で印象的な言葉がありました。

「広島は東俊希も大迫も荒木も山崎も川辺も中島も加藤も、主力は自前で育てたプレーヤーが並んでいる」

広島のユース出身者がトップチームの中心にいる。ガンバも同様にアカデミー出身者が多いクラブです。この2つのクラブが真剣勝負をする——こういう試合こそ、日本サッカーの財産だと僕は思います。

東俊希がユースから上がってきて、今や代表クラスの左WBになり、こうして決勝ゴールを叩き込む。これが「育てて、勝つ」というクラブ哲学の結実です。


まとめ:残り2試合、上を見て走れ

「連敗止めて、しっかり今日は90分で勝ち切ることができた。残り2試合まだ上に行けるチャンスがあるし、諦めずに3連勝を目指して頑張りたい」

試合後のインタビューで語られたこの言葉が、今の広島のすべてです。

WEST順位表を見てみましょう。

順位クラブ勝点試合
1名古屋3116
2神戸2815
3G大阪2517
4C大阪2516
5広島2416
6清水2416

勝点24で5位。3位ガンバとの差はわずか1。残り2試合を連勝すれば、十分に上位進出の可能性があります。

今日見せた「前に出る」サッカーを、あと2試合、貫いてほしい。43.4mのラインで。東俊希のメンタリティで。塩谷の読みで。川辺の気の利くポジショニングで。中野の20回のスプリントで。

この勝利は、ただの1勝じゃない。ガウル広島が「自分たちのサッカーで勝てる」と証明した試合です。

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