1-5の裏にあったもの。広島がオーストリアで仕込む「4バック」というオプション (オーストリアキャンプ_シュトゥルムグラーツ戦)

  • URLをコピーしました!
試合トレーニングマッチ サンフレッチェ広島 1-5 SKシュトゥルム・グラーツ
日時・会場2026年7月11日(土)現地時間17:00キックオフ/スポーツプラッツ シュトゥーベン(オーストリア)
試合形式45分+30分+30分の3本制(計105分)
得点広島の得点は新井直人(57分)

サンフレッチェ広島の試合はDAZNでライブ配信中です。

DAZNで観る

スタジアムに行けない人は、ダゾーンDAZNで応援を


開幕まで、あと4週間を切りました。

チームは今、オーストリアにいます。7月7日から19日までの1次キャンプ。そのキャンプ最初のトレーニングマッチが、7月11日(現地時間17時キックオフ、会場はスポーツプラッツ シュトゥーベン)に行われました。

相手はSKシュトゥルム・グラーツ。結果は、1-5です。

数字だけ見れば、完敗です。実際、紫熊倶楽部の中野和也さんも「完敗」と書かれています。でも、この記事は「負けた」という話をするために書くのではありません。この1-5には、ちゃんと読み解くべき中身があって、しかもその中身は、僕には希望に見えたからです。

順番に見ていきます。

目次

なぜ1-5だったのか——「3週間」という差

まず、この試合の前提条件があまりにも不平等でした。

シュトゥルム・グラーツは、7月21日にUEFAチャンピオンズリーグ2次予選でハーツ(スコットランド)と戦う予定が組まれているチームです。つまり、この試合のちょうど10日後に、公式戦の、しかもCL予選という真剣勝負が待っている。当然、仕上がっていなければ困る。

バルトシュ・ガウル監督は、彼らが既に3週間トレーニングを積んでいたと語っています(紫熊倶楽部)。実際、確認できるだけで4試合のトレーニングマッチをこなした上での、この広島戦でした。

対する広島は、キャンプが始まったばかり。しかも、ただ始まったばかりなのではなく、新井直人をはじめ多くの選手が「きつい」と口にするほど強度の高いトレーニングを積み重ねている、その真っ最中でした。疲労が抜けきらない体で、CL予選を10日後に控えた欧州のチームと戦った。これが実態です。

さらに象徴的なのが、試合形式です。シュトゥルム・グラーツ側は、自分たちの選手の出場時間を確保するために「45分+30分+30分」という変則的な3本制を広島に求めてきました。合計105分。普通に考えれば、キャンプ序盤のチームには過酷すぎる要求です。

それを、ガウル監督はあえて受けた。

僕はここに、この監督の思想が出ていると思います。キャンプでのトレーニングマッチとは、そういうものだ、という認識。勝つために条件を整えるのではなく、負荷をかけるために試合を使う。105分という時間そのものが、トレーニングだったわけです。

この前提を頭に入れた上で、試合の中身を見てください。まったく違って見えてくるはずです。

試合の中身——1本目と2本目で、まるで別のチーム

以下、試合の描写はクラブ公式発表と、紫熊倶楽部の中野さんのレポートに拠ります。

1本目(45分)

前半15分と18分に、立て続けに失点しました。セットプレーからの1点と、右45度からのスーパーゴール。特に後者は、正直どうしようもない類のゴールです。

攻撃は、加藤陸次樹・中村草太・小林志紋の3トップ。ただ、この3人にいいボールが供給できませんでした。シュートらしいシュートは、41分の菅大輝のミドル(相手GKのビッグセーブに阻まれました)と、アディショナルタイムに中村草太が打った場面くらい。攻撃が形にならないまま、0-2で1本目を終えます。

2本目(30分)

メンバーを入れ替えた広島が、ここから攻勢に出ます。

そして通算57分(2本目の12分)、松本泰志が縦にスルーパスを通します。ラインぎりぎりで追いついたのが東俊希。彼が上げたクロスに、逆サイドから走り込んできた新井直人が飛び込み、しっかりと決め切りました。

1-2。

その後も広島は相手を押し込み、いくつかチャンスをつくっています。ただ、決め切れませんでした。

3本目、そして終盤

足が止まりました。公式発表の得点経過によれば、105分、106分、112分と立て続けに3失点(公式の分表示はアディショナルタイムを含む通算のようで、名目上の105分を超えています)。1-2が1-5になったのは、この最終盤です。

つまり——90分の時点では、1-2だったわけです。崩れたのは、通常の試合なら存在しない、その先の時間帯。この事実だけで、「1-5」という数字が何を意味しているかは、だいぶ見え方が変わってくると思います。

中野さんもはっきりと書かれています。これはクオリティや戦術の差ではなく、明白にコンディションの問題である、と。僕もまったく同感です。

DAZNでサンフレッチェ広島の全試合をチェック

主力3人不在と、ユースの2人

もうひとつ、条件の話をしておかなければなりません。

この試合、広島はセバスティアン・アレー、浅野拓磨、キム・ジュソンという主力を欠いていました。105分という長丁場を、限られた人数で回さざるを得なかったわけです。

その結果として、広島ユースの2人——野口蓮斗と原湊士——が起用されました。どちらもユースの3年生です。

ここは、書き方を間違えないようにしたいところです。これは「大抜擢」ではありません。人が足りなかったから、やむを得ず起用した。それが実態です。

ただ、面白いのはここからです。中野さんは、この2人がしっかりと闘えていたと書かれています。

考えてみてください。ユースの選手は今、シーズンの真っ只中にいます。4月に開幕したプレミアリーグWESTを戦い続けてきて、体が出来上がっている状態です。一方、トップチームはオフ明けで、体を作り直している最中。だから、ユースの2人のほうが動けた。

これは笑い話ではなくて、むしろ「今回の1-5はコンディションの問題である」という診断を、これ以上ないほど雄弁に裏付けている事実だと思うんです。技術で劣っていたなら、高校生が大人に混じってしっかり闘えるはずがない。単純に、動ける体を持っている者が動けた。それだけの話です。

とはいえ、この2人の名前は覚えておいて損はありません。

野口蓮斗。2008年4月20日生まれ、熊本市出身の18歳。170cm・63kgのMFで、広島ユースでは10番を背負い、キャプテンも務めています。世代別代表にも選出されてきた選手で、6月30日に2026/27シーズンからのトップチーム昇格が内定しました。今はユース所属のまま2種登録選手としてトップのトレーニングに参加しており、クラブ公式のトップチーム選手一覧にも、背番号46ですでに名前が載っています。

もう一人の原湊士は、広島F.Cジュニアユースから上がってきた生え抜きのMF。ユースでは7番を付けており、今年3月にはU-18日本代表に追加招集されています。熊本から来た10番と、広島で育った7番。対になっているのが、またいいですね。

ところで、野口の経歴を追っていて、僕はあることに気づきました。

熊本のソレッソ熊本で育ち、広島県立吉田高校に進んで広島ユースへ。ユースでは10番。身長は170cm。

これ、満田誠が歩いた道と、不思議なほど重なります。ソレッソ熊本、吉田高校、広島ユースの10番。同じルートを通ってきた選手が、二人いる。

ただし、一つだけ違います。満田はあの道の先で、トップ昇格を果たせませんでした。流通経済大学を経由して、回り道をして広島に戻ってきた。

野口は、その昇格を掴みました。そして今、オーストリアのピッチに立っている。

この試合、最大の収穫——「4バック」というオプション

さて、ここからが本題です。

この試合で広島は、3-4-2-1と4-2-3-1を併用しました。

これは大きなニュースです。広島といえば3バック。スキッベ前監督から受け継がれ、このクラブの代名詞になっていた形です。その広島が、4バックを試している。

ガウル監督は、その意図をこう説明しています(紫熊倶楽部より)。日本では3バックに対して相手がミラーゲームを仕掛けてくる試合が多い。だから「4バックをオプションとして持ち」、状況に応じてフレキシブルに対応できるようにしていきたい——と。そして、このキャンプで本格的に取り組むことを示唆しました。

これ、思い当たる節がありませんか。

百年構想リーグで、相手が同じ形で噛み合わせてきて、盤面が膠着する。そういう試合を、僕たちは何度も見せられてきたはずです。ミラーゲームにされると、広島の強度と機動力が「相殺」されてしまう。その手詰まりを、ガウル監督は明確に課題として認識していた。

だから、4バック。可変システムというより、相手の出方に応じて盤面そのものを変えてしまうという発想です。

ちなみに今年5月、僕はこのブログで、ガウル監督とG大阪のヴィッシング監督を比較する記事を書きました。そのときの対比軸は「ガウルの3バック vs ヴィッシングの4-2-3-1」でした。その2ヶ月後に、ガウル監督自身が4-2-3-1を手に取ろうとしている。監督というのは、こうやって自分の引き出しを増やしていくものなんですね。

相手は、オーストリア・ブンデスリーガを2位で終えたばかりのチーム。直近のヨーロッパリーグではリーグフェーズを戦い、レンジャーズをホームで下してもいます。そこに新しい形をぶつけてみられた。しかも105分という長い時間の中で。1-5という数字と引き換えに得たものとしては、これは十分すぎるほど大きいと僕は思います。

まとめ——僕がこの1-5を悲観しない理由

もう一度、整理します。

  • 相手は3週間仕上げてきた、CL予選を10日後に控えたチーム
  • 広島はキャンプ序盤、高強度トレーニングの真っ最中
  • 105分という変則マッチを、ガウル監督はあえて受けた
  • 90分時点では1-2。崩れたのはその先の最終盤
  • アレー、浅野、キム・ジュソンを欠く布陣
  • それでも3-4-2-1と4-2-3-1を併用し、新しい形を試せた

これを「完敗」と呼ぶのは正しい。でも「悪い兆候」と呼ぶのは、たぶん間違いです。

キャンプというのは、本来こういう場所なんだと思います。仕上げる場所ではなく、壊して作り直す場所。105分走らされて足が止まったなら、それは足が止まるまで走ったということです。

チームは12日にリカバリーを行い、14日にはNKスラヴェン・ベルポ(クロアチア)とのトレーニングマッチを予定しています。次はどんな形を試すのか。4バックはどこまで形になっているのか。楽しみに待ちたいと思います。

そして8月8日(土)19時15分、エディオンピースウイング広島。ジェフユナイテッド千葉との開幕戦は、すでに全席完売(リセール販売分を除く)が発表されています。

その日、僕たちが目にするのは、オーストリアで足が止まるまで走った選手たちです。

DAZNで2026/27シーズンの全試合を観る


合わせて読みたい


スタジアムに行けない人は、ダゾーンDAZNで応援を

にほんブログ村

出典・参考

  • サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「トレーニングマッチ(vs.SKシュトゥルム・グラーツ)の試合結果について」(2026年7月12日)
  • サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「2026/27シーズン 夏季トレーニングキャンプ(1次)スケジュールのお知らせ」(2026年7月4日)
  • サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「野口蓮斗選手(サンフレッチェ広島ユース)2026/27シーズン トップチーム昇格内定のお知らせ」(2026年6月30日)
  • サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「トップチーム選手」(2026/27シーズン選手一覧)
  • サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「8/8(土)vs.千葉 全席完売(リセール販売分除く)のお知らせ」(2026年7月10日)
  • 紫熊倶楽部(中野和也)「オーストリアキャンプ最初のトレーニングマッチ、シュトルム・グラーツ(オーストリア)に完敗」
  • ゲキサカ「プレミアリーグWEST サンフレッチェ広島ユース登録メンバー」(2026年4月4日)、原湊士U-18日本代表追加招集の報道(2026年3月13日)
  • Jリーグ公式サイト「満田誠(サンフレッチェ広島)の経歴は?」、サンフレッチェ広島オフィシャルサイト「満田誠選手、2022シーズンの新加入内定のお知らせ」(2021年2月25日)
  • STV News/Edinburgh Evening News(ハーツvsシュトゥルム・グラーツ CL2次予選の日程、オーストリア・ブンデスリーガ順位)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次