J1百年構想リーグ WESTグループ 第15節
2026年5月6日(水)15:00キックオフ
エディオンピースウイング広島|入場者数:27,028人
天候:晴|気温:29.8℃
サンフレッチェ広島 1-1(PK 4-5)ヴィッセル神戸
| 時間 | スコア | 得点者 |
|---|---|---|
| 43分 | 1-0 | 加藤陸次樹(広島)※東俊希の左クロスをヘディング |
| 63分 | 1-1 | 小松蓮(神戸)※途中出場、左足シュート |
PK戦:広島 4-5 神戸(権田修一が広島1本目・木下康介のキックをセーブ。神戸は5人全員成功)
勝てる試合でした。
xG 2.20対0.63。シュート19本対9本。枠内シュート13本対3本。コーナーキック6本対1本。
どの数字を見ても、広島が圧倒していた試合です。
でも結果は1-1、PK負け。対神戸4連敗。3試合連続で勝ちなし。
4年間エディオンピースウイング広島のホーム側に座り続けた男——ミヒャエル・スキッベ監督が、今度はアウェイ側のベンチから、知り尽くした古巣を攻略しました。
前半——広島がペースを握った45分
攻守の切り替えが速い、緊張感のある立ち上がり
両チームとも前線からのプレスが激しく、攻守の切り替えが速い展開でした。DAZN解説の森﨑浩司さんは「ゴール前の迫力という点では、広島がより多くのチャンスを作れた前半だった」と評しています。
神戸はハイプレスの中でロングフィードを使い、大迫勇也を起点にボールを収めようとします。一方の広島は、中島洋太朗と井手口陽介のマッチアップが注目ポイントでした。中島洋太朗のボールタッチやパスのタイミングにはセンスを感じましたし、井手口も危険な場面でのインターセプトで存在感を示しました。
37分——東俊希のカットイン右足
中島洋太朗の展開から東俊希がボールを受けると、カットインして右足を振りました。
左利きの東がカットインすれば、誰もが「アウトにかけて左足で巻くのか」と身構えます。でもこの場面では、その動きをキックフェイントに使って右足を選択しました。解説でも「右足のシュートの精度が上がってくると、より危険な選手になる」と言われていましたが、東は右足でもゴールを奪える選手です。このシュートは惜しくもゴールにはなりませんでしたが、得点シーンへの伏線になりました。
43分——先制。東俊希のクロスから加藤陸次樹
右サイドで作って左に振って、東俊希がクロスを狙える位置に入りました。
木下康介と加藤陸次樹のゴール前への入り方が良かった。東のクロスに加藤がヘッドで合わせて、先制ゴール。
解説の柿谷曜一朗さんが「完璧でした。完璧です」と言い切ったように、右で作って左に展開し、幅を使って崩した美しいゴールでした。
前半は1-0、広島リードで折り返します。
後半——スキッベの修正、小松蓮の一撃
ハーフタイムの2枚替えが流れを変えた
スキッベ監督は後半開始と同時に2枚替えを敢行します。
- 満田誠 → 小松蓮
- 佐々木大樹 → 広瀬陸斗
前節ガンバ大阪に0-5で大敗した直後。その修正として前線のカードを入れ替え、フレッシュな攻撃力を投入しました。この判断が、試合の転換点になります。
63分——小松蓮の同点ゴール
途中出場の小松蓮が仕事をしました。
敵陣でクリアボールを引っ掛けてドリブルで前進し、ペナルティエリア手前から左足を一閃。ゴール左隅に流し込んで同点に追いつきます。
広島にとっては、前半にカットイン時の「寄せのところに人がいない」という課題が指摘されていましたが、守備面でも似たことが起きています。後半は神戸の修正に対応しきれませんでした。
それでも広島は攻め続けた
同点にされた後も、広島はシュートを打ち続けました。試合全体でシュート19本、枠内13本。しかし追加点は生まれません。
71分には加藤陸次樹に代えてジャーメイン良を投入。81分には中島洋太朗→志知孝明、中村草太→鈴木章斗と2枚替え。ガウル監督も手を打ちましたが、スコアは動かず。
1-1のまま90分が終了し、PK戦に突入します。
PK戦——権田修一の壁
広島の1人目は木下康介。
そのキックを、神戸GK権田修一がストップしました。
神戸は5人全員がきっちりと決め切り、最終スコアは4-5。この試合で枠内シュートわずか3本だった神戸が、PK戦という別の「試合」で勝利を収めました。
スタッツ比較
| 項目 | 広島 | 神戸 |
|---|---|---|
| シュート | 19 | 9 |
| 枠内シュート | 13 | 3 |
| xG(ゴール期待値) | 2.20 | 0.63 |
| ボール支配率 | 53% | 47% |
| パス(成功率) | 474(73%) | 342(65%) |
| オフサイド | 0 | 2 |
| CK | 6 | 1 |
| ファウル | 9 | 6 |
| 警告 / 退場 | 2/0 | 2/0 |
※スタッツはDAZN中継画面より。xGもDAZN表示値。
ボール奪取位置比較
| エリア | 広島 | 神戸 |
|---|---|---|
| AT(アタッキングサード) | 8% | 0% |
| MT(ミドルサード) | 32% | 43% |
| DT(ディフェンシブサード) | 60% | 57% |
| 奪取回数 | 60 | 65 |
| 平均奪取位置 | 36.8m | 31.0m |
分析——なぜ広島は勝てなかったのか
1. xG 2.20で1点。「作れるけど決められない」が続く
岡山戦もxG 1.33で無得点。福岡戦はxG不明ですがシュート数で上回りながらPK負け。そして今日はxG 2.20という圧倒的な数字を叩き出しながら、たった1点しか決められませんでした。
広島の攻撃は間違いなくリーグトップクラスのチャンスを生み出しています。問題はフィニッシュの精度。シュート19本のうち枠内13本——つまり枠を外したのは6本だけで、枠には飛んでいるのです。それでも権田修一を中心とした神戸の守備を崩しきれなかった。
これは「運が悪い」で片付けていい話ではありません。3試合連続で起きている構造的な課題です。
2. スキッベの修正力——「知り尽くしている」強み
スキッベ監督は試合後のインタビューで、ドイツ語でこう語りました。
「少し変な感覚でした。反対側(アウェイ側)にいるのが。この4年間でたくさんの仲間を得ましたし、クラブは心に残るクラブです」
その感傷とは裏腹に、采配は冷徹でした。
前半、神戸は広島のハイプレスの前にチャンスを作れず、カットイン時の寄せにも課題が出ていました。スキッベはそれをハーフタイムで修正し、2枚替えで前線を活性化。投入した小松蓮が63分に同点弾を決めました。
広島を4年間指揮した男だからこそ、広島の「弱点」が見える。プレビュー記事で書いた「情報の非対称」は、まさにスキッベに軍配が上がった形です。
3. 東俊希の存在感——攻撃の生命線
この試合で最も輝いた広島の選手は東俊希です。
37分のカットインから右足シュート、43分の先制アシスト。左利きの彼がキックフェイントを使って右足を選択する場面は、解説陣も「右足の精度が上がればもっと危険な選手になる」と評価しました。
東は長崎戦で鈴木章斗のゴールをアシストし、福岡戦では左足で美しいゴールを決めています。チームが苦しい時期にこそ、彼のクオリティが際立ちます。
4. 権田修一のPK戦——90分間枠内3本の守護神が、PK戦で試合を決めた
90分間で枠内シュートわずか3本。広島の19本の半分にも満たないシュート数。
それでも神戸が勝てたのは、権田修一がいたからです。PK戦で広島1本目の木下康介のキックをストップし、チームに勝利を手繰り寄せました。試合内容で劣勢でも、GKの一発で結果が変わる。PK戦の残酷さと、経験あるGKの価値を改めて突きつけられました。
スキッベ監督コメント(試合後・抜粋)
「少し変な感覚でした。反対側にずっと4年間座っていましたし、この4年間で本当にたくさんの仲間を得ました。クラブは心に残るクラブです」
スタメン・交代
サンフレッチェ広島(3-4-2-1)
スタメン
| ポジション | 背番号 | 選手名 |
|---|---|---|
| GK | 1 | 大迫敬介 |
| CB | 33 | 塩谷司 |
| CB | 3 | 山﨑大地 |
| CB | 19 | 佐々木翔 |
| RWB | 15 | 中野就斗 |
| DMF | 6 | 川辺駿 |
| LWB | 24 | 東俊希 |
| シャドー | 35 | 中島洋太朗 |
| シャドー | 39 | 中村草太 |
| FW | 11 | 加藤陸次樹 |
| FW | 17 | 木下康介 |
交代
| 時間 | OUT | IN |
|---|---|---|
| 71分 | 加藤陸次樹 | ジャーメイン良 |
| 81分 | 中島洋太朗 | 志知孝明 |
| 81分 | 中村草太 | 鈴木章斗 |
ヴィッセル神戸(4-1-2-3)
スタメン
| ポジション | 背番号 | 選手名 |
|---|---|---|
| GK | 71 | 権田修一 |
| DF | 3 | マテウス・トゥーレル |
| DF | 4 | 山川哲史 |
| DF | 24 | 酒井高徳 |
| DF | 41 | 永戸勝也 |
| DMF | 7 | 井手口陽介 |
| MF | 25 | 鍬先祐弥 |
| MF | 19 | 満田誠 |
| FW | 10 | 大迫勇也 |
| FW | 11 | 武藤嘉紀 |
| FW | 13 | 佐々木大樹 |
交代
| 時間 | OUT | IN |
|---|---|---|
| 46分 | 佐々木大樹 | 広瀬陸斗 |
| 46分 | 満田誠 | 小松蓮 |
| 66分 | 永戸勝也 | ジエゴ |
| 71分 | 鍬先祐弥 | 日髙光揮 |
| 90分 | 山川哲史 | カエターノ |
カード
| 時間 | 選手 | チーム | 種類 |
|---|---|---|---|
| 53分 | 井手口陽介 | 神戸 | イエロー |
| 71分 | マテウス・トゥーレル | 神戸 | イエロー |
| 75分 | 中村草太 | 広島 | イエロー |
| 77分 | 山﨑大地 | 広島 | イエロー |
WEST順位表(第15節終了時点)
| 順位 | クラブ | 勝点 | 試合 | 勝 | PK勝 | PK負 | 負 | 得点 | 失点 | 得失差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 名古屋グランパス | 28 | 15 | 7 | 2 | 3 | 3 | 25 | 18 | +7 |
| 2 | ヴィッセル神戸 | 28 | 14 | 7 | 2 | 3 | 2 | 23 | 16 | +7 |
| 3 | ガンバ大阪 | 25 | 16 | 4 | 5 | 3 | 4 | 24 | 20 | +4 |
| 4 | 清水エスパルス | 22 | 15 | 4 | 3 | 4 | 4 | 17 | 16 | +1 |
| 5 | セレッソ大阪 | 22 | 15 | 4 | 4 | 2 | 5 | 14 | 14 | 0 |
| 6 | サンフレッチェ広島 | 21 | 15 | 5 | 2 | 2 | 6 | 20 | 19 | +1 |
| 7 | 京都サンガFC | 20 | 14 | 4 | 3 | 2 | 5 | 18 | 18 | 0 |
| 8 | ファジアーノ岡山 | 20 | 15 | 4 | 2 | 4 | 5 | 17 | 22 | -5 |
| 9 | アビスパ福岡 | 20 | 16 | 3 | 4 | 3 | 6 | 16 | 25 | -9 |
| 10 | V・ファーレン長崎 | 19 | 15 | 6 | 0 | 1 | 8 | 16 | 22 | -6 |
※PK勝ち=勝ち点2、PK負け=勝ち点1
DAZN解説の森﨑浩司さんが語った通り、「上も詰まっているし下も近い。10チームだから1回勝てば全然変わる」という混戦状態です。広島の勝ち点21に対し、4位の清水と5位のC大阪が勝ち点22でわずか1差。下を見れば7位京都から9位福岡まで勝ち点20が3チーム。まさに「勝てば上、負ければ下」が見える位置にいます。
まとめ——圧倒しても勝てない。でも、このチームの攻撃力は本物です
福岡戦PK負け、岡山戦敗北、そして今日の神戸戦PK負け。3試合連続で勝てていません。
でも、数字を見てください。今日のxG 2.20は、内容的には「勝つべき試合」だったことを示しています。広島の攻撃は機能しています。東俊希の左サイドからの仕掛け、中島洋太朗のパスセンス、加藤陸次樹のゴール前の動き。チャンスを作る力は確実にあります。
問題は、作ったチャンスを仕留めきれないこと。
そして、この日はスキッベという「広島を知り尽くした男」が相手でした。4年間の知見を持って反対側のベンチに座り、ハーフタイムに的確な修正を施した。試合後に「心に残るクラブ」と語ったスキッベの感傷は本物でしょう。でも、采配は感傷とは別です。僕たちはそのスキッベに、4回続けて勝てていない。
次節は中3日、アウェイでガンバ大阪戦です。連戦の中でコンディションは楽ではありませんが、総力戦で踏ん張るしかありません。
xG 2.20の攻撃力は「嘘」ではないと、僕は信じています。あとは、その力を結果に変えるだけです。
