2026年3月22日、明治安田J1百年構想リーグ WESTグループ第8節、清水エスパルスvsサンフレッチェ広島がIAIスタジアム日本平で行われた。試合は3-1で清水が勝利し、広島は今季初の連敗を喫した。
シュート数15対11、ゴール期待値2.16対1.28——数字の上では広島が清水を上回った。それでも広島は3失点を喫し、3点差をつけられた。「なぜ負けたのか」。そこにはスコアには現れない根本的な課題が潜んでいた。
試合情報
- 大会:明治安田J1百年構想リーグ WESTグループ 第8節
- 日時:2026年3月22日(日)13:00キックオフ
- 会場:IAIスタジアム日本平
- スコア:清水エスパルス 3-1 サンフレッチェ広島
スターティングメンバー
サンフレッチェ広島(3-4-2-1)
- GK:大迫敬介
- 3バック(右)佐々木翔/(中央)荒木隼人/(左)キム・ジュソン
- ボランチ:塩谷司・山崎大地
- 右WB:中野就斗/左WB:志知孝明
- シャドー:川辺駿・ジャーメイン良
- ワントップ:鈴木章斗
前節(名古屋戦)からスタメン4人変更。東俊希・前田直輝はベンチスタート。
前半:吉田豊の5年ぶりゴールと、大迫のミスを見逃さなかったオセフン
立ち上がりは広島も悪くなかった。鈴木章斗とジャーメインが裏を狙い、中野のロングスローからセットプレーのチャンスも作った。しかし先制したのは清水だった。
前半19分、北川航也がゴール前で鋭く切り返してシュートを放つと、ボールが広島DFの佐々木翔にリフレクション。これを吉田豊がコースを見極め、綺麗にゴール右隅へ沈めた。5年ぶりのゴールを奪ったのは36歳のチーム最年長。今季全試合フル出場を続ける吉田が、吉田監督の信頼に結果で応えた。
先制直後、清水はすぐに追加点を奪う。オセフンが最終ラインからのビルドアップに圧力をかけると、大迫が左足でコントロールした際にボールが大きくなったところを見逃さず奪取。そのままゴールに流し込み今季3点目。吉田孝行監督が掲げる「前線からのハイプレス」がゴールに直結した形だ。
「今シーズン初めて奪った前半での得点、そして早いタイミングで追加点も生まれた」——前節まで後半に集中していた清水の得点が、ついに前半から生まれた。0-2で折り返した広島に、重苦しい空気が漂い始めた。
後半:2度ネットを揺らしながら、2度のノーゴール判定
巻き返しを狙うガウル監督はハーフタイムに山崎大地→木下康介、志知孝明→松本泰志の2枚替えを敢行し、システムを4-2-3-1に変更。前節の名古屋戦と同じ後半の手を打ってきた。
後半、広島は何度も反撃の糸口をつかみかけた。セットプレーからキム・ジュソンがゴールを決めたかに見えたが、オフサイドの判定でノーゴール。さらに川辺駿のヘディングはゴールラインを割ったかどうかの微妙な場面となったが、こちらもゴールは認められなかった。
広島サポーターにとって、この2度の判定はあまりにも痛かった。ガウル監督も試合後に言及している。
「難しい判定で、あの辺でゴールが決まっていれば、また全然違った展開になると思っていた」
しかし、その直後に清水が3点目を奪う。左サイドからのグラウンダーのクロスを北川航也が押さえて流し込み3-0。試合の流れを事実上決定づけた。北川にとって今季2点目のゴールとなった。
後半83分頃、ジャーメイン良が中野のロングスロー→前田直輝が落として→松本泰志の正確なクロスをヘッドで押し込んで1点を返したが、反撃はここまで。最終スコア3-1で広島は今季初の連敗となった。
データが語る「負け方の謎」
試合後のスタッツは、サポーターを困惑させるものだった。
| 指標 | 広島 | 清水 |
|---|---|---|
| シュート数 | 15本 | 11本 |
| ゴール期待値(xG) | 2.16 | 1.28 |
| ボールダッシュ位置 | 32.4m | 41.7m |
シュート数も、ゴール期待値も、広島が清水を上回っている。枠内シュートも広島の方が多かった。にもかかわらず、広島は1得点3失点で敗れた。
この矛盾を解く鍵が、ボールダッシュ位置だ。
清水が敵陣41.7mという高いラインでボールを奪い続けたのに対し、広島は32.4mと9m以上も低い位置でしか奪えなかった。スキッベ前監督時代、広島のボール奪取ラインはJリーグ随一の高さを誇っていた。その「前で奪う守備」が今日は機能せず、清水のハイプレスに押し込まれた。
パスの傾向を見ても、広島は最終ライン(荒木)からの配球が最も多く、中盤が本来の仕事をさせてもらえなかった実態が浮かぶ。清水の宇野禅斗が縦パスを何度も読んで遮断し、川辺駿はプレッシャーを受け続けた。ボールを前に動かせない時間が長く続いたことが、試合全体のリズムを狂わせた。
課題の整理:川辺のポジションとビルドアップの出口
今日の試合で明確になった課題を整理したい。
①吉田監督の「立ち位置の確率論」が機能した
試合前のプレビューで触れた吉田孝行監督の哲学——「確率論的に有利なポジションを取り、ボールを奪う」——が今日はまさに機能した試合だった。清水の選手たちは常に「次にボールが来る場所」に先回りし、セカンドボールの回収やパスコースを読んだインターセプトを繰り返した。特に宇野禅斗は広島の縦パスを何度も遮断し、広島の中盤を完全に封殺した。これはフィジカルで勝った守備ではなく、「立ち位置」によって生まれた守備だ。広島がどこにボールを出そうとするか、その選択肢をあらかじめ潰す清水の設計が、今日の広島の低調なビルドアップを生み出した一因と言えるだろう。
②デュエルで負けた
かつての広島といえば、球際の強さが代名詞だった。スキッベ前監督時代には「Jリーグで最もボール奪取ラインが高いチーム」として名を馳せ、デュエルの勝率でも上位に位置していた。しかし今日は清水の球際の強度に後手を踏む場面が目立った。宇野禅斗には縦パスを何度も読んで遮断され、前線の鈴木章斗や川辺も常にプレッシャー下でのプレーを強いられた。ガウル体制になってからのデュエル強度の変化は、今後も注視すべき点だろう。
③塩谷・山崎のボランチは本当に機能していたのか
この日ガウル監督はDFライン出身の塩谷司と山崎大地をダブルボランチに起用した。「オセフン対策」として高さと強さを中盤に配置する狙いだったと思われるが、果たして機能していたのだろうか。実況でも「塩谷と山崎が仕事をさせてもらえていない」と指摘があったように、ボールを前に動かす出口を作れず、むしろビルドアップを詰まらせる要因になった可能性がある。2失点目の起点になった大迫のミスも、ボランチ経由でボールを逃がせなかったことと無関係ではない。守備的なボランチを置くことがチームの問題を解消するのか、それとも別の問題を生み出しているのかは、改めて検討が必要だ。
④ボール奪取ラインの低さ
前から奪いに行く守備設計が機能しなかった。清水の積極的なハイプレスに対し、広島は最終ラインでのボール保持を余儀なくされた。ボールダッシュ位置32.4mは、広島らしさとはほど遠い数字だった。
⑤サイドを穴にされた
清水のサイドアタック、特に左のカプシャバと右の北川から再三崩された。3点目はそこから生まれている。後半に東・前田が投入された後も広島の右サイドに穴が生まれ、そこを突かれた。
ひとつ議論したいのは川辺駿のポジションだ。今日はトップ下に入ったが、清水のプレッシャー下では本来の力が出しにくかった。ボランチに戻し、中盤でボールをさばく役割を与えることで、最終ラインに頼らないビルドアップの出口を作れる可能性がある。次節以降、ガウル監督がどのような判断を下すか注目したい。
両監督のコメント
吉田孝行監督(清水)
「前半はパーフェクトだったと思う。みんなの点を取りたい、勝ちたい気持ちがゴールに乗り移ってくれた。引いて守るのではなく、ラインを高くというのはチームで意識していた」
前節までの課題「ずるずる下がってしまう」を克服しての快勝。吉田監督が掲げる”相手コートでサッカーをする”スタイルが今日は見事に体現された。清水はこれで3連勝、90分での勝利は今季2試合目となった。
バルトシュ・ガウル監督(広島)
「自分たちの守備が悪くて失点したというわけではない。1点目はいいゴールだったし、2点目は何も言うこともない。後半は自分たちが持ち直した。オフサイドかどうか難しい判定があり、その後もゴールラインを割ってないかという場面があった。あの辺でゴールが決まっていれば、また全然違った展開になると思っていた。試合全体を通じていえば、決して点差が離れたほど悪い試合ではなかった」
スコアほど内容に差はなかったという認識を示したガウル監督。難しい判定に触れながらも、チームへの信頼は揺らいでいない。連敗からの修正力が問われる。
試合を見逃した方はDAZNで
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まとめ
清水3-1広島。スコアは大敗に映るが、シュート数・xGともに広島が上回った「内容的には惜しい」試合でもあった。しかし3点を失ったという事実は重い。
ボール奪取ラインの低さ、中盤でボールを動かせなかったこと——これは一度の試合で解決できる問題ではないかもしれない。ただ、東俊希が復帰し、前田直輝も存在感を見せた。2度認められなかったゴール、xG2.16という数字は、攻撃のポテンシャルがまだ十分にあることを示している。
ガウル監督はこの連敗から何を学ぶのか。紫の再起を信じて、次の試合を待ちたい。
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